第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計 その2
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
日本政府の暗殺から15年の時を経て、現世に意識を復活させた木原マサキ。
彼に、生への執着がなかったかといえば、嘘である。
そしてこの異世界に転移してから、その感情はより強くなった。
幾度となく襲い掛かるソ連の魔の手、あの忌々しい宇宙怪獣BETAとの戦闘。
前世に比べ、危険でスリリングな、手に汗を握る日々。
そうした体験は、若い秋津マサトの肉体を得たマサキに、ある種の焦燥感を抱かせるまでになってきていた。
かつてのように、公私ともに脂ののりきった時期に、殺されるのは避けたい。
いや、そのことを防げぬのなら、せめて見目麗しい女性を我が物にし、せめて自分の子孫を残したい。
そんな煩悩にまみれた、小市民的な感情だった。
勿論、世界征服の野望はあきらめていないし、それが第一の目標である。
最悪、自分の遺伝子というものは、前世の様にクローン受精卵を残して、誰かに託せばよい。
そうすれば、ゼオライマーがある限り、木原マサキは必ず復活するのだから……
幾度となく、その様に考えていても、やはり秋津マサトの若い肉体である。
段々と、マサキの精神は、若い青年の中でくすぶった、ある種の飢餓感から、逃れられなかった。
ベアトリクスを一目見た時、その稀有な容姿に心惹かれたのはそういう事情があった。
また、ユルゲンが企んだアイリスディーナのと見合いで、本心から求婚をしたのも、前世でのやり直しを求めていたものではなかったのか。
時々、冷静になってそう考えるのだが、若い時分に色々と体験したものである。
情熱的なキスの味などは、とうの昔に忘れてしまったはずだ。
仮にかつての木原マサキの元の肉体であったのならば、昔の歳であったのならば、アイリスディーナなどは親子ほどの年の差はあろうか。
前々世の時の年齢など、既にどうでもいい事なのに、こだわる必要はあるまい。
やはり、俺の心は乾いているのだろうか……
マサキは、深い沈潜から意識を戻すと、ものに取りつかれたかのように紫煙を燻らせた。
翌日、いつも通りに河崎の岐阜工場に赴いたマサキは、朝の全体朝礼が終わるとすぐに事務所を後にした。
貴賓用の応接室に入り、電話をかけ始めた。
かけた相手は、ニューヨークのフェイアチルド・リムパリックだった。
「もしもし、木原だが。
夜分遅くに済まないが……」
日本とニューヨークの時差は14時間。
マサキがいる岐阜市は朝9時だったが、マンハッタンのオフィスは前日の19時であった。
「お前の所に、半導体関連の系列企業があったよな。
ソフトウェアの専門家を呼んでほしい」
「どういうことですか」
「何、F-4ファントムの制御システムを近代化改修したい」
「私の方で、シリコンバレーの関係者に声を掛けましょう」
「助かる
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ