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冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計 その2
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釣れるのだろうか。
 そんな事を考えていた矢先である。
ふと、声がかったのに気が付いて、居住まいをただす。
 
「この辺で、周囲を困らせる色恋沙汰はお終いにしてくれると助かるのだがね」
 声をかけてきたのは鎧衣だった。
マサキは、自分の生き方にケチを付けられたかと思ったのだろう。
食って掛かるような剣幕で、反論した。
「貴様、言っておくがな。
俺は、むやみやたらに生娘や人妻にちょっかいを出しているわけじゃないぞ。
この間のキルケの件も、一時的なものと了解しているはずだ」
 無論、アイリスディーナとベアトリクスを除外しての発言だった。
「君がどう生きようと、私には関係ない。
だが、殿下と政府首脳の目には否定的に映るんだ」
 鎧衣から、諫言(かんげん)の言葉という表現方法ではない。
心臓の喚くような鼓動が、マサキの胸を苦しいほど強く圧迫してくる。
彼は唇を湿らせると、鎧衣から圧迫に答えた。
「どうしろというのだ。
あらゆる煩悩を断って、坊主のような暮らしをしろというのか」
「アイリスディーナさんや、キルケ嬢のようなことが続く様では、斯衛軍の威信にかかわる。
殿下は、君に結婚を命じた」
 今の鎧衣の報告で、一時剃刀の刃のように鋭くとがったマサキの緊張は、その瞬間、脆くも崩れ去った。
「はぁ?
将軍が直々に?すると、これは上意か」
マサキは、深い諦めのため息をついた。 
「そいつはなんとも、封建的な話だ」
一転して、居直ったように冷たいせせら笑いを浮かべる。  
「どんな女だ。
どうせどこぞの武家か、素封家の娘だろう」
 鎧衣は、ぬっと、その右手をマサキの前に突き出した。
「これが身上調査書だ」
 鎧衣から見せられた写真には、17・8歳の少女が写っていた。
白黒写真だが、セーラー服に長い黒髪。
上半身しか映っていないため、身長はわからないが、肉付きはよさそうだ。
「五摂家、崇宰の姻戚(いんせき)にあたる(おおとり)家の娘さんだ。
今度の土曜日に会う約束になっている」
 鎧衣は悪びれもしないで、マサキに言い返した。
だが、マサキは憎々しげに口をゆがめる。
「ほう、情報省では結婚案内所の仕事もしているのか。
先進技術の海外進出事業推進の他に、見合いの手配までしてくれるのか。
フハハハハ、考えておこう」
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