第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計 その2
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たものだ。
今回は非公然ではなく、公然と工作が出来る下地が揃っている。
何も、支那を肥え太らす必要はあるまい。
この世界の日本を、奴らを、俺の奴隷としてこき使ってやろう。
前世日本で、ゼオライマーをめぐる陰謀で抹殺されたマサキとしては、どうしても日本政府を信用できなかった。
この世界でも、同じである。
せっかく甦ったのだから、今度は政財界に裏から手を入れて、日本を、世界を支配してやろう。
幸い、まだ秋津マサトの肉体は若いのだ、時間はたっぷりある……
マサキは紫煙を燻らせながら、何とも言えない感傷に浸っていた。
さて、マサキといえば。
その日の午後は、城内省と陸軍、河崎をはじめとする戦術機メーカー数社の技術者とともに岐阜工場の生産ラインにいた。
ゼオライマーのフレーム技術の応用した戦術機用フレームの組み立て試験が行われていた。
工業製品は、芸術品とは違う。
いくら素晴らしい設計図や企画であっても、末端の作業員が組み立てられねば、製品としては通用しない。
日本政府の計画では年間120機の量産を望んでいた。
一方近衛軍は、武家の階級ごとに違う特注品の納品を望んでいた。
機体のカラーリングだけではなく、家格によって異なる装備、特殊なOS、通信機能などである。
最悪共食い整備と呼ばれる、同機種からの稼働部品を移植することも困難にするこの提案に現場は混乱していたのだ。
マサキは、各社合同の計画に戸惑っていた。
かつて所属した鉄鋼龍では、マサキのイニシアチブですべてが動いた。
計画のほとんどをマサキが立てて、その通りに現場が動いたし、マサキ自身も作業に加わった。
だが曙計画の人員に比べれば、規模は断然に小さかった。
曙計画は、200人を越す科学者や研究員、技術者が居た。
協力している軍の研究所や大学、企業など、産学官を含めれば、5万人からなる大規模プロジェクトだった。
投入される資金も膨大で、その範囲も広大だった。
一例をあげれば、F4戦術機でさえ、光菱重工を主とする約1500社の民間会社が、その国内生産を請け負った。
無論、ライセンスによる国産は、米国から直接購入するより割高になる。
だが、戦闘機の生産や大規模修理ができる技術基盤を持つ、というメリットの方が大きかったのだ。
鉄鋼龍というトップダウン型の組織にいたせいか、横のつながりで仕事を進める曙計画に、マサキは己の無力さを感じていた。
若干、過労気味だった彼は、休憩所のベンチで一人うなだれていた。
これから、国防省と城内省の会議を行い、予算案作成に向かう。
そのあとは長い国会審議だ、ちょっとうんざりする。
この俺に、政界に太いパイプでもあればな……
美久に渡した金塊という媚薬で、どれほどの大物政治家が
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