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冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計 その3
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能していると、不意に入り口が開く音がした。
こんな深夜に、来るやつがいるのだろうか……
 いくら11時過ぎとはいえ、ここは旅館。
とりあえず温泉につかる客は、いるだろう。
貸し切り状態でなくなってしまうのは、残念な話だ。
相変わらず愚かな考えよと、思わずため息が漏れる。
 
 すると、入ってきた人物が声をかけてきた。
「いや、先生。探しましたよ。
何処に行くかぐらい、連絡が欲しいですな」
 湯けむりが立ち込める中、現れたのは護衛の一人である白銀だった。
しかも手ぬぐいで体を隠さず、その青年の逞しい肉体を誇示していた。
 後ろにいた美久は慌てふためきながら、両手で乳房を隠しながら湯船に肩までつかる。
ところが白銀は裸身を晒しながら、ゆっくりと湯船に入り、マサキの方に近寄った。
「氷室さん、そんなに慌てて、どうしたのかな」
「だって……ここは貸し切りにしたはずですよ」
 白銀は美久の言葉が分からないかのように首を傾げた後、ぽんと手を叩いた。
「な、何を……」
「この旅館はもともと混浴ですし……
僕の方で事情を話したら、旅館の人にOKをもらいました」
「えぇ!ええええ――」
「はぁ、ああああ、馬鹿か!」
 マサキと美久が驚愕の事実に声を上げた瞬間、白銀は柔和な笑みでつぶやく。
「いくら僕たち以外に客がいないからって、深夜に大声出すのは問題ですよ」
「で、でも、だからって、あの……」
 単純に、マサキはあきれていた。
とにかく驚かされたのは、白銀が堂々と入ってきた挙句、旅館側も躊躇することなく入浴を認めたことだった。
護衛と説明したのもあろうが、前世ではこんなことあっただろうかと、訝しむほどだった。
「もう、先生も事前に連絡くださいよ。こんな遅くになっちゃったじゃないですか」
「そ、そういう問題じゃないと思うんですけど」
困惑する美久をよそに、白銀は、ため息を吐きながら、肩にお湯をかける。
「ああ、いいお湯ですね。景色もきれいで最高だ」

「先生、話は変わりますが……」
「どうした」
「アイリスさんの事が忘れられないんですか」
「何を……」
「この際です、僕と裸の話し合いをしてみませんか。
先生の本心が聞いてみたい」
 一瞬困惑するマサキに、寄り添う美久。
彼女は、後ろから滑らかな素肌を背中に寄せてきた。
柔らかい体がぴったりと密着してきて、思わず何も考えられなくなる。
「私に遠慮せずに、どうぞお話しください。
それに、人間は裸の方が真実を話すと言いますから……」
 今度は白銀のほうが意外そうな顔をする。
余計な事を口走ってしまったみたいで、情けなく狼狽した。
「い、いやっ……別に深い意味は……」
 短いため息を漏らしながら、目の前に広がる雪化粧を見つめるマサキ
その表情
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