第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計 その3
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目の色は、明るい茶色で、若干吊り上がったようなシャープな瞳。
飛びぬけて端正な顔立ちに加え、その体つきも年相応の物であった。
たっぷりとした双丘と、それを強調するように括れた腰付き。
臀部は、たわわに実った白桃を思わせた。
離れてみれば、はっきりとした陰影を作るほど、見事な体つきであった。
しかし、栴納にとって、その冴えた美貌は非常にコンプレックスの元でもあった。
事あるごとに男たちから淫猥な目線を向けられ、女学校の同級生たちから羨望と嫉妬の入り混じった視線を感じるからである。
彼女の母は、鳳家の側室の一人、一般社会でいう妾である。
いつもは母と二人で過ごしているのだが、今日は珍しく父が来ていた。
父は正室、婚姻関係のある正式な妻と同居しており、本宅で過ごすことも珍しくなかった。
これは、武家社会の子孫繁栄のためのシステムである。
武家に限らず、貴人の血を引く家や豪商、素封家の常として、血筋をまず残すことを求められたためである。
妾腹であり、女の身空の自分が、文句を言ってもどうしようもない。
「お父様、これはどういうことですか」
近衛騎兵連隊長を務める鳳祥治中佐は、娘の反応を当然のように受け流した。
騎兵連隊という名称であるが、その実態は戦車と自走砲で編成された戦車連隊である。
航空戦力として、少数の米国製のUH-1ヘリコプターと戦術機を有していた。
鳳中佐は、渋面のままの娘を見据える。
そして、呻く様に漏らした。
「栴納、妾腹とはいえ、お前も弓箭の出の者だ。
かしこくも、殿下の思し召しに背くような振る舞いは、するまい」
父は型通りのことを言うも、娘の栴納には受け入れがたかった。
16歳になったばかりの少女とはいえ、彼女もまた、現代の女である。
敗戦後の価値観の変容の影響を、もろに浴びた世代である。
映画・小説などから、自由なアメリカ文化を知らぬわけでもない。
マスメディアや、その他の影響もあって、恋愛結婚こそすべてであった。
見ず知らずの男の下に嫁ぐ古風な習慣など、受け入れがたかったのだ。
さて土曜日になると、マサキは京都にいったん戻った。
市内の然る屋敷に招かれ、そこで見合い相手の女学生と引き合わされた。
あった娘は、年のころは16歳で、清楚な美少女だった。
確かに顔のつくりも、背丈も平均的で悪くはない。
ただ話していて、気が強そうなのと、思ったより体の線が平坦なのにはショックを受けた。
この辺は、マサキの好みの問題もあった。
栴納は、振袖そのものの美を重視するあまり、体型を犠牲にする着付けにした。
自身がコンプレックスに思っている大きな胸を晒しで巻いて、平坦にしていたのだ
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