第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計 その3
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の世界の女と戯れる事はなかった。
せいぜい、アイリスディーナと数度キスをしたようなものである。
確かにアイリスディーナは、今すぐ抱きしめたい存在であった。
だが、マサキ自身が自分の前々世の年齢を気にして、躊躇していたのだ。
それに彼自身が、あの可憐な少女をおもんばかって、美久以外の人間を近くから排除していたのも大きかった。
かつて、鎧衣の前で大言壮語した様に。
マサキはこの世界に来てから、まったく童貞と同じような生活をしていたのである。
マサキの事を恨んでいるものや、嫉妬している関係者は多かった。
親ソ反米を掲げる、陸軍の大伴一派ばかりではない。
ソ連・シベリアでの資源開発に参加している河崎重工や大空寺財閥系の総合商社などであった。
ソ連ビジネスを生業とする彼らにとって、マサキは目の上のたん瘤。
この報道やいかがわしいうわさを機会に、潰す気であった。
政府が一枚岩でない様に、業界団体も一枚岩ではなかった。
マサキに今、失脚されては困るグループもいた。
政府高官では、御剣雷電や榊政務次官である。
マサキをうまく利用して、BETA戦争を終わらせようと考えている集団である。
次に、業界団体では、恩田技研や反・大空寺系の総合商社である。
彼らは、マサキの交友関係を軸として、北米や西欧諸国のコネクションを増やそうと計画していたからである。
マサキを陰謀から、一時的に遠ざけるにはどうしたらいいか。
本当に結婚させてしまえばいいだけである。
そういう訳で、マサキの見合い計画が、ひそかに始まったのであった。
岐阜基地司令の見合い話や、富嶽重工業の専務の娘の縁談を断ったマサキ。
そんな彼の様子を鎧衣から聞いて、城内省はあれこれ考えていた。
マサキはアイリスディーナと引き合わされたとき、露骨に、思うさまな感情を示した。
どんな深窓の女性を、彼の目の前に出せばよいのだろうか。
それも豪農商家の類は、問題でない。
彼が欲していたのは、いわゆる上流社会の女性で、貴種でなければならなかったのではないか。
そういう経緯から、崇宰の姻戚にあたる鳳家の娘に狙いが定まった。
彼女をマサキと引き合わせることにしたのだ。
晩餐を終えた鳳栴納は、居間で過ごしていた。
メラミン色素の薄い茶色の髪は、彼女の母親譲りで、癖がなく太い髪質だった。
腰まである長い髪を結わずに伸ばし、リボンや髪飾りの類は着けていなかった。
それは質素を旨とする武家の娘、という事ばかりではない。
変に飾り付けるより、光り輝く髪の艶だけで、十分見栄えがするためである。
瑞々しい柔肌は、色もまるで雪化粧を施されたように、飛びぬけて白かった。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ