暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計 その3
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 木原マサキの扱いは、日本政府にとって頭痛の種だった。 
核戦力のない日本にとって、天のゼオライマーの登場は福音だった。 
そして、木原マサキ自身が望んで、日本政府に帰順したことは天祐であった。
 だがマサキ自身は、毛頭そんな事を考えていないのは、公然の事実。
おまけに美女や美丈夫に弱く、東西ドイツの計略に乗せられそうになったこともあった。
そんな折、マサキを揺るがす話が帝国議会で持ち出される。 
 

 事の始まりは、週刊誌に載った記事であった。
「近衛軍将校が外人女性と外地で入籍した」
その報道がなされると、間もなく衆議院の予算委員会での野党からの国会質問で行われた。
政府および城内省は、「事実関係の確認に勤める」という形で逃げ切った。
 「篁の事が掘り返されるのではないか」
事態を重く見た城内省は、独自の調査を始める。
 調査結果は、驚くべきものであった。 
野党議員に話を持ち込んだのは、ソ連大使館の参事官。
 おそらくGRUかKGBの工作員。
彼らの狙いは、篁を離婚させて、曙計画の次の計画である次期戦術機開発計画を遅らせることではないか。
 篁の元からミラが去ったりすれば、日米関係は悪化する。
ではどうすべきか。
 篁のスキャンダルを、マサキの話しにすり替えればよい。
マサキとアイリスディーナの件ならば、日本政府の損害は少なくて済む。
その様に、城内省は考えたのだ。

 では、真相はどうだったのか。
野党の下に情報を持ち込んだのは、外交官に偽装したKGB工作員だった。
 この非公然工作員は、野党ばかりではなく、出版社や新聞社などのマスメディア、官界におけるソ連スパイ網、財閥などと接触をした。
 その際、マサキに関する根の葉もないうわさを流して回ったのだ。
以下のような内容であった。

「木原マサキは、東独軍将校の妻と不倫関係にある」
或いは、
「マサキは、西ドイツ軍のシュタインホフ将軍の孫娘と極秘入籍している」
もっとひどいものだと、
「木原マサキは、東独に隠し子がいる」
などである。

 無論、これらの話は、事実無根のうわさ話であった。
マサキにしてみれば、ベアトリクスの事は好きだった。
だが、まともに手すら握ったこともなかったし、ましてや不倫など考えたこともなかった。
 たしかに頭の中では、口にも出せぬ猥雑な事を思い描いた。
それとて、美久にすら話したことがなかった。
 キルケの件も、確かにシュタインホフ将軍に騙されかけた。
密室につれこまれ、キルケが花嫁衣装で近づいてきたが、咄嗟の機転で脱出したことがあった。
そして、この話を知るのは、指折り数える物しかいなかったのだ。
 東独に隠し子などという噂は、人を食う様な話だった。
マサキはこの世界に来てから、こ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ