第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計
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木原などという馬の骨になぜそれほどまでに……」
「何、出戻り女でもいい。
お前も、あのゼオライマーの威力は知っていよう」
「たしかに素晴らしいマシンです。
ですが女一人で満足しましょうか」
「そこよ。
我らも、その辺は調べて、考えておる。
彼奴には惚れた女がいてな」
「では、なおさら、その女と一緒にさせれば」
「じゃが、夷狄の女では不味かろう」
「若輩者の私とて、城内の考えは分かります。
篁の愚か者の二の舞は、避けとうございますな」
「そこでじゃ、殿下の方で一計をご案じなされた。
奥に仕えておる、お前の従妹叔母を、木原に下賜するという話が出てな」
貴人が側仕えの女性を身分が下の物に下げ渡すことは、古今東西珍しいことではない。
わが国でも、封建時代以前からよく見られた、婚姻の形態の一つであった。
真壁にとって、それは侮辱にも近い事だった。
たしかに奥仕えの叔母は、とうに中年増を超えてはいたが、可哀想に思えた。
(中年増は、現在で言う25歳)
彼女は、真壁の曽祖父が外で作り、認知した妾の孫だった。
年は2歳としか離れていないので、零慈郎にとって叔母というより姉のような存在だった。
「何、安心せい。
彼女は、殿下のお手はついてはおらぬ。あの木原でも満足しようぞ」
零慈郎の叔母は、真壁の曽祖父が見初めた女の影響もあって、恐ろしいほどの佳人だった。
その美貌たるや、血縁関係を重視してきた武家社会では、恨みや嫉みを抱かれるほどのものであった
当時の日本人女性にしては背は高く、170センチ強で、これまたマサキ好みの女であった。
「木原と祝言を上げなくてもよい。
最悪の場合、奴の種さえ貰って、子さえ作れば、それは弱みになる。
鎖にもなる」
「木原が、そんなことで躊躇しましょうか」
「人間は元来、情に弱いものよ。
木原とて、情に絆されれば、この武家社会に刃を向けることはあるまいよ」
他方、富嶽重工の見合いの件は、大伴一派にも伝わっていた。
GRU、KGBと近い関係を持つ大伴は、マサキの情報を彼等から間接的に聞いていた。
「ここで他の五摂家はおろか、東独、西独の連中を出し抜く」
大伴からそう話を聞いた大空寺真龍と光菱の専務は、仰天した。
大空寺は独自の情報網で他家の出方を知っているからである。
一方、光菱の専務は、大伴の話を聞くなり覚悟した様だった。
この専務の事を、お忘れの読者の方もいよう。
ここで著者からの、簡単な説明を許されたい。
光菱の専務は大伴との陰謀に関わるうちに、マサキの復讐を恐れた。
そこで、ひそかに15歳になる自身の妾の子を、マサキに差し出す準備をしていた人物であった。
「大伴さん、実は……」
そういって
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