第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計
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俺がしでかしたことへの懲罰でもする気か」
流石にマサキは緊張していた。
基地司令は、マサキの言葉に相好を崩す。
「木原君、君に耳寄りな話でね」
話しかけてきたのは、基地の総務課長を務める少佐だった。
「曹長、君は独身だったね。
見合いとかに興味はないかい?」
総務課といえば、基地の渉外担当も務める都合上、地元民との接触も多い。
彼の話だと、岐阜や愛知などの素封家の娘との縁談の話だった。
あれやこれや追及されることがないということに安堵した一方、マサキは危機を感じていた。
頼みもしないのに見合い写真を見せられ、相手の家柄に関して説明が始まったのだ。
俺のような根無し草に、そんな商家や豪農の娘は釣り合うはずがない。
マサキは、変な意味で恐縮してしまった。
良家の子女なら、もっといい男を紹介した方がいいではないか。
確かに帝国陸軍の禄を貰ってはいるが、俺は一所に留まるような生活をしていない人間だ。
彼女たちの望むような安穏とした家庭生活は難しかろうと、考えてしまった。
それに裏金は別として、下級士官である。
薄給で、気苦労も絶えないであろう……
面倒くさいし、断るか。
咄嗟に、マサキは、そう答えた。
「俺には先約があるのでな」
なんとか、その場を切り抜け、部屋を後にした。
部屋から、河崎の岐阜工場に戻ると彩峰が待っていた。
「何の話だった」
「見合いの話だが、面倒くさいから断った」
そう笑顔で答えるマサキに対して、
「お前、ちょっと裏に来い」
彩峰からは、キツイ説教があったとだけ書き記しておこう。
それで引き下がる相手ではなかった。
今度は河崎の工場にいると、富嶽の開発部長から電話がかかってくるようになった。
毎日、家業終了直前に電話がかかってくるので、頭に来たマサキは、
「そんなに要件があるのなら、俺のところに来い」
と、啖呵を切ってしまった。
その週の土曜日である。
岐阜市から近くのホテルで会合があると呼び出されて行ってみたら、富嶽重役の娘と引き合わされてしまった。
だまし討ちに近いことに会ったマサキは、相手に会うだけあって、帰ってしまった。
富嶽がマサキに相手を送って、見合いをしている話は城内省にまで届いていた。
話を聞いた五摂家の各家は独自に動くことになった。
まず、五摂家の斑鳩家は、代々の家臣で、有力武家の真壁家に頼ることにした。
真壁家の当主である真壁零慈郎を自宅に呼び寄せた。
「真壁よ。お前の家から女を出せぬか」
零慈郎青年は、人を魅了する好男子だった。
怜悧そうな目、色白の肌、刃の切っ先を思わせる細面。
一目見たら忘れられないほどの、美丈夫だった。
「翁、我が家に差し出す女などおりません。
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