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冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
美人の計
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ついて知りたいのではないか。
マサキは、一呼吸置いた後、
「たしかに俺の作ったルナ・フラッシュは、高出力のビームの剣として使える。
こいつがあれば、戦艦はおろか、富士山ですらバターの様に切り刻める」 
「それを戦術機に持たせる刀に応用すれば、要塞級も簡単に切れるかなって……」
「切るどころか、熱でドロドロに溶かすことも容易い。
重光線級のレンズ部分も、たとえ殻が閉じていても簡単に焼き切れる」
 マサキは毅然と言い放ちながら、ミラの表情を伺った。
彼女は、不安そうな色が顔に浮かんでいた。
「戦術機に改造なしで搭載可能なの?」
「出来ないこともない。
リチウムイオン電池を用いたビーム発生装置を作ったとして……
使い捨ての短剣なら1時間、長剣なら3時間ほどは持たせる自信はある」
 ミラの表情から、あらゆる感情のかけらが消えた。
次に現れたのは、まさしく安堵だった。
「すごいわ」
「試作品が出来たら、大小一振りづつくれてやるよ」
「嬉しいわ」

 ミラを見送った後、岐阜工場の会議室に足を運んでいた。
工場長を始めとする河崎重工幹部たちと軽食をとっていた折である。
マサキの様子を見る為、神戸本社から来ていた専務が、ふと漏らした。
「話は変わりますが……」
「どうした、申してみよ」
「木原さんは、結婚しないのですか。
天才科学者として名高い貴方は、望めばそれこそより取り見取りですのに……」
「えっ」
 その瞬間、マサキは答えに戸惑った。
飲むために握っていた紅茶のカップが、思わず震えるほどだった。
「俺には……」
 アイリスディーナと挙げた秘密の結婚式の事を思わず言いそうになってしまった。
だが、彼女との関係は内々の式を挙げただけで、籍は入れていなかった。
 マサキ自身も、彼女をまだ子供だと思っているせいで手を出していないので、そのままにしていたのだ。
そのせいで、去年の12月にシュタインホフ将軍からキルケとの結婚を勧められたのは、本当にいい迷惑であった。
結局、あの場から理由を付けて逃げだしたから良かったものの、留まっていたらどんな誤解をされたものか。
 その時である。
マサキのすわる背後にあるドアの方で、騒がしい声がした。
「お願いです。ただいま工場長は会議中でして……」
 社務の女性事務員が引き留めるのを無視して入ってきたものがあった。
ドアを乱暴に開けたのは、彩峰(あやみね)大尉だった。
「工場長、木原の事を少し借りるぞ」



「司令が部屋まで来いとの指示があった」 
 そう言って、隣の岐阜基地に連れていかれる。
司令室に待っていたのは、司令と数名の男たちだった。
ざっと見たところ、二本の線の入った階級章からは佐官級。
マサキは、ただならぬ気配を感じた。
「これは
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