第三部 1979年
孤独な戦い
姿を現す闇の主 その3
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つ、古都でもある。
植民地時代から1983年のスリランカ内戦勃発前までは、首都コロンボに次ぐ人口を持つスリランカ第2の都市であった。
ここにはタミル・イーラム解放のトラの一大拠点があったのだ。
かすれた声でマイクが言葉を切ると、大きなため息をついた。
その仕草は、鎧衣に興奮しているのか、あるいは恐れを抱いているのか。
少なくとも何らかの影響を受けて、落ち着きを失ていることを意味していた。
ベルギー人の副官は、カナディア・CL-215飛行艇のエンジンの起動をかける。
そういう手配りをした後、彼はマイクの方を向いて、言った。
「なんで木原と鎧衣が一緒に」
「鎧衣が護衛に付いたんだろう」
そしてテーブルの上に一梃のピストルを置いて、彼は言い添えた。
「ジャフナに行ってくる。鎧衣には死んでもらうしかないな」
レシプロエンジンの轟音が響き始めた機内には、人質の他に十数名の乗員がいた。
イスラエル製のウージ機関銃を持った男が、マイクの方に向かって怒鳴る。
「俺も行くぜ、相手は鎧衣だ。簡単にはいかん」
ドドドと、爆音をあげるエンジンの為に大声を張り上げねば、話が出来ないほどであった。
男はいったが、マイクは、むしろよろこばない様子を示して、
「待ちな、何かの罠かもしれない」
「例えば、どんな」
男は、解し難い顔をして、仔細を追求した。
マイクは、顔を振って、傍らの迷彩服姿の男たちへ眼をそそぎながら、
「俺たちをあぶりだすための」
「そうか、ジャフナへノコノコでかけていけば、俺たちの事がばれてしまうかもな」
「木原ってガキは、ソ連に近づくために、この会談を始めたんだ。
当然、日本政府にもこのことを話している」
「どうする」
「危険な芽は、摘まなくちゃなぁ」
マイクの声は一転して、かなり上気したものになっていた。
話している内に心身が高揚してきたようだった。
「人間狩りに、良い場所さ」
そういって、木箱の中から真新しい自動小銃を取り出して見せる。
銃は、ベルギー製の自動小銃・FNFALのコピー品である、インド製の1A自動小銃であった。
ベルギーとのライセンス契約を無視し、英国軍の銃を模倣して作った違法生産品であった。
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