第三部 1979年
孤独な戦い
姿を現す闇の主 その3
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りとおすしかない。
「俺は人から命令されるのが、大嫌いでね。
特に老いさらばえた政治家からな……」
マサキは言葉を切ると、胸ポケットからホープの箱を取り出した。
使い捨てライターで、茶色のフィルターのついたシガレットをあぶり、火をつける。
彼がタバコを吸うときは、大体話を別なところに持っていく手段でもあった。
「そうか……。
これはわしの独り言だがな……」
そういうと、御剣は懐中より煙管入れを取り出した。
胴乱の中にある刻み煙草を丸めて、純銀製のキセルに詰める。
火をつけ、ゆっくりとキセルを吹かした。
器用に煙の輪を吐いた後、問わず語りが始まった。
「次の臨時国会では、ココム規制の……緩和に関する改正案が提出される。
5年の時限立法ではあるが、BETA戦争を鑑みて、20年ぶりに紛争当事国への先進技術輸出が再開される見通しとなった。
これは東欧も含んだ、合法的な輸出制度だ」
御剣の言う意味は、周囲のものにも、そしてマサキにも伝わった。
これは日本政府としての、マサキへの譲歩なのだと。
「ま、まてッ!た、頼まれたら別だ。
見返りのあるお願いに喜んで答えるのが、俺の心情だからな」
御剣が今しがた言ったことは、日本政府の懐柔策であることは、マサキにも理解できた。
それに、今のこの場では、マサキは弱い立場だった。
「一つだけ、聞かせてくれ」
これで、俺が改良したF-4とA−10を、アイリスディーナの手元に送り込むができる。
アイリスディーナへの思慕と自己陶酔な高ぶりに、マサキは甘酸っぱい胸騒ぎを覚えてしまった。
「本当に、東側に戦術機を輸出できるのだな」
老獪な政治家は、マサキがもう拒めないのを見越していた。
「そうだ……」
御剣は、意味ありげにマサキの顔を見て、ほくそ笑んだ。
マサキ達を襲撃した謎の犯人たちは、ラトロワたちを誘拐したまま、マレ市内にいた。
彼は、ちょうどスリランカへ向けて飛行艇の離陸準備をしているところであった。
「どうしたマイク」
マイケル・ホーア元英国軍少佐は、仲間内ではマイクと呼ばれていた。
「どうもこうもねえよ。今回の日ソ会談を仕掛けたのは例のガキだってよ。
木原マサキとかいう」
マサキの行動には、マイクも呆れるしかなかった。
いや時には、何か不気味な感じすらうけないこともない。
「聞いたことあるな、その名前」
「『ザ・サン』(英国のスポーツ新聞)で見たんだよ。
アイツだろう、東トルキスタンのハイヴを落とした……」
「おお、生きていたのか」
「さっき連絡があって、ジャフナに向かう船に、鎧衣左近がいる」
ジャフナとは、セイロン島北部にある都市である。
13世紀に建国されたジャフナ王国の王都の歴史を持
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