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冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
姿を現す闇の主 その3
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からだ。
「木原君は、東ドイツと関係が深い人物です。
ホアー少佐は、かつて東ドイツから血塗られた狂犬と宣伝煽動されたことがございます。
反共主義者ですし、英国からの誘いがあって、木原君の命を狙うような行動をとっても矛盾はありません。
案外、日ソ交渉つぶしも彼から英国に持ち込んだ線もあります」
「そうか、英国の連中はそんな恐るべき計画を立てていたのか」
「敵としては、支那や東ドイツ仲と間割れをすれば、良い機会になります。
今こそ、叩き潰すチャンスです」
「うむ……」
御剣が、語気を強めて聞く。
「では、木原よ。中南海に連絡してくれ。
インド亜大陸の共産党組織は、あきらめろとなッ」
 その時、マサキには中南海という言葉の意味が解らなかった。
中南海という言葉は、単に北京にある中国共産党の施設を表す言葉だからだ。
 インドの話なのに、なぜ支那政府に相談するのだ……
信じられない面持ちで、御剣に聞き返す。
「ど、どういうことだ」
「これを機会に日本政府がインド、モルディブ、セイロン、ネパールの共産党組織をつぶす」
 御剣が言わんとしている共産党組織とは、インド周辺国にいる毛沢東主義の集団。
つまりこの機会に乗じて、中国共産党の影響や支援を受けた団体をつぶそうという話だった。
「何!」
「それから、東ドイツ政府を通じて、セイロンにあるスリランカ人民解放戦線に連絡を問てほしい。
彼等ならば、タミル・イーラム解放の虎の拠点を知っているはずだ」
御剣に冷ややかな声で言われて、マサキは改めて事の重大さに身をすくめる。
「……」
 マサキは一瞬、沈黙するしかなかった。
インド周辺において中共の影響力を削げば、自然とソ連が優位になる。
ただでさえ、今インド軍は、旧式化した英国製の装備から、ソ連製の装備に更新し始めている。
戦術機でさえ、英国や米国の提案した案を拒否し、ソ連製のMIG21を導入したのだから……
「そいつぁ、無理だ!スリランカ人民解放戦線は毛沢東主義のグループ。
東ドイツは1969年の中ソ紛争以降、支那の中共政府と断交に近い状態だ」
「だから、こうして君に頼んでいるのではないか。
世界最強のマシンを持つ人物で、しかも共産圏に有人が多い木原マサキ君に……」
 マサキは、自分で自分が、今更ながら口惜しくてたまらなかった。
ユルゲンと組んで、東欧全域まで事実上支配下におきながら、ついに最後の一線を超えることが出来なかった自分が、不甲斐無かった。
そんな自分が、ここで御剣の条件を飲むというのは、男として敗北を認めるように思えたのだった。 
 いや、命令を受け入れたならば、前の世界の様に惨めな最期を迎えるかもしれない。
世界征服という、自分の野望の為ばかりではない。
アイリスディーナの為にも、ここは頑張
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