第三部 1979年
孤独な戦い
姿を現す闇の主 その3
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官、私もそれがよいとおもいます。
この会談自体、木原博士自身がまいた種ですから、彼らが片付けに来ますね。
テロリストどもを消すつもりで……」
ふしぎな事に指令室の要員の顔には、誰の顔を見ても緊張感が欠けていた。
これから戦争が始まるのかもしれないのに。
各自の顔を見ても、通常の軍事演習と変わらないような静かな気持ちで、驚くほどであった。
誰もことさらにこのことに関して、反省する者はいなかったらしい。
これは一体どうしたものだろうと、反問する者がいたら違ったかもしれない。
だが、司令官の言葉で兵たちの不安は、消え去ってしまった。
「私がすることは許されないことだが、これでインド政府は無関係でいられる」
こうして話しているうちに、ラダビノッド少佐も心の内で、やや安堵を抱いて来た。
救援に来たグルカ兵たちによって、御剣以下日本政府外交団はマイソール級巡洋艦に移っていた。
戦前に作られたこの船は、英国海軍からインド軍に武装を撤去した後引き渡された。
建造から40年近い歳月がたっている為か、すでに老朽化し、その上、海難事故の影響で速力も大してでなくなっていた。
今はインド海軍の軽巡洋艦デリーとともに、停泊練習艦となっていたのだ。
マサキは御剣と共に、マイソールの艦橋に呼ばれていた。
その時、現地協力者と接触した鎧衣が情報をもたらした。
「今回の事件を引き起こしたグループの多くは、南アフリカ経由で来たとの事です。
その点から考えられるのは、コンゴ動乱で知られる「灰色雁」が関与しているという可能性です」
鎧の話はこうだった。
「灰色雁」とは、コンゴ動乱時に活躍した傭兵を中心としたコマンド部隊である。
傭兵の多くは白人で、ベルギー軍退役将校、CIA工作員、南アやローデシアの義勇兵などであった。
彼らを率いたマイケル・ホーアは、敵軍に包囲されたスタンリービル(今日のキサンガニ)から1600名の民間人救出を成功させた。
その後、コンゴ動乱の敗戦を受けて、南アに隠居した。
そして、見初めたスチュワーデスを後添えとして迎え、最近は映画撮影に没頭しているとされる人物である。
「昨晩発生した、ベンガル州での反乱も……
この度、モルディブを襲撃したタミル・イーラム解放の虎も……
双方とも、表看板としては、インド共産党毛沢東派の集団です。
インド、モルディブ、セイロンの三か所同時に発生していますから、中共が起こしたという風に目を持っていきやすい面があります」
そう話しながらも、鎧衣は傭兵グループに旧知の仲間たちが多く参加していることに心を痛めていた。
彼自身も、ベトナムやカンボジア戦線で、商人という肩書で共産ゲリラに潜り込み、CIAやSASRの破壊工作を手伝った
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