第百二十八話 酒も飲んでその十
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「今日のうちに出来る限りね」
「洗い流して」
「忘れられる様にして」
「実際に忘れることね」
「それでまたね」
「新しい恋愛ね」
「それに生きるの、それで周りに言われても」
このこともまた言うのだった。
「絶対にね」
「気にしないことね」
「そうよ」
こう言うのだった。
「いいわね」
「そうするわね」
「そんなこと言う奴は碌な奴じゃないし将来もね」
「碌なものじゃないのね」
「何かそんなこと高校時代に言ってた人がいて」
「人の失恋を嗤う様な」
「その人の知り合いが三十過ぎてからその人とたまたま擦れ違ったら」
その時はというと。
「手首の見える様な場所に入れ墨していたらしいわ」
「手首に?」
「そう、夏だったから尚更丸見えだったらしいわ」
「入れ墨見えるところにあったらそれだけで会社の面接とか落とされるでしょ」
咲はすぐにこう言った。
「そうでしょ」
「絶対にね」
愛もその通りだと答えた。
「入れ墨ってもうね」
「それだけでアウトよね」
「そんなのを手首みたいな場所に入れてるなんて」
「まともなお仕事就けないわね」
「普通のお店でも工場でもね」
愛はさらに言った。
「あからさまに見える場所に入ってたら」
「不採用よね」
「手首なんて本当に夏は丸見えで」
そうなってというのだ。
「冬でもちょっとしたらね」
「見えるわね」
「海外のアスリートの人ならいるわよ」
「野球でもそうよね」
咲はこの仕事の人達のことを思い出した。
「よく見たら」
「ファッションで入れてるでしょ」
「そんな人いるわね」
「外国はそんなスポーツ選手もいるわよ」
「けれど日本だと」
「スポーツ選手でも入れないでしょ」
「入れた人いるけれど」
咲はある元スポーツ選手のことを癒そうな顔で思い出して話した、そのそちらの筋になったとしか思えない外見も思い出してのことだ。
「まあね」
「碌なものじゃないでしょ」
「ええ」
愛にその通りだと答えた。
「もうね」
「そうでしょ、日本だとね」
「普通の人は入れないわね」
「痛いしお金かかるし」
愛は入れ墨を入れた場合どうなるかも話した。
「いいことないしね」
「それで入れたのねその人」
「元々人の失恋を嗤う様な人だから」
「入れ墨入れて」
「自分からまともじゃないってね」
その様にというのだ。
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