第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その3
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「では、木原博士……」
ゲーレンは、初めて自己の秘懐を解くかの如く、膝をすすめて、言い出した。
「ズバリ、ビルダーバーグ会議じゃよ。
まあ、外交問題評議会が米国の見えざる政府ならば、ビルダーバーグは、米欧の陰の政府といえるじゃろう」
ゲーレンは、重たい口振りでいった。
その瞬間、はっと、鎧衣の眼が、真剣になって振りかえった。
ビルダーバーグ会議とは、欧州における政財界のトップによる秘密会議の事である。
一説によれば、蘭王室の王配殿下の提案によって始まったと流布されている。
表向きは対ソの資本主義国連合を作るという名目で始まったと関係者の証言にある。
オランダのオーステルベークにあるビルダーバーグ・ホテルで結成され、第一回会合が開かれた。
そのことから、ビルダーバーグ会議と称されるようになった。
参加者はおよそ100名前後。
その大部分が、24名のヨーロッパのメンバーと15名のアメリカのメンバーから成る運営委員会によって招待され、招待者のリストは毎年変わる。
参加国のすべて北米と西ヨーロッパからで、毎年、カナダ、西ドイツ、イギリス、フランス、オーストリアなどで開催されてきた。
会議は原則非公開で、交通費と宿泊費は参加者が負担する。
配偶者や秘所を同行させることは認められておらず、単身で参加し、専属の護衛が付いた。
三日間の会議期間中は、会場内に缶詰めになり、会場外の警備は開催国の軍の特殊部隊が行った。
「いま、世界に冠たるこのドイツを悩ませ、開闢以来の大問題となっているのは、東西冷戦と国家の分断じゃ」
「このドイツ再統一の問題を解決するためには、どうしても欧州各国間の協力が不可欠じゃ。
そこで、われわれは各国間の利害を調整して、自分たちの賛同者を増やす必要がある」
「ちょうどスターリンが死んだ頃じゃった。
ポーランド人の社会主義者、ジョセフ・レティンガーという人物が国際会議を計画した。
蘭王室に国婿として入ったリッペ=ビーステルフェルト公に対して、欧米の有力者を集めて、諸問題について定期的に討議する提案をした」
マサキは、ゲーレンの話にやや意外な顔した。
だがそれにも、否と顔を横に振って、
「蘭王室と西ドイツに、何の関係がある?」
ゲーレンは、怪訝な顔をするマサキの問いに答えて、
「リッペ=ビーステルフェルト公はな、われわれの古い協力者の一人じゃ。
彼は、若いころ突撃隊にいて、その後NSDAPの正式党員になり、経歴を洗う為に民間に下った。
IG・ファルベンインドゥストリーに入った後、蘭王室に婿として入った。
戦争中もカナダに疎開せずにロンドンにいて、その情報をベルリンにもたらしてくれていた」
「!」
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ