聖夜編 悪魔の影と騎士の絵本 前編
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。そして、僅かに漂う女のフェロモンに混じる、コーヒーの香り。その波紋が、2人の「芯」に伝播していた。
「……ッ!」
「ぬッ……!」
次の瞬間、2人はトレンチコートを翻して腰のホルスターに手を伸ばし、それぞれの愛銃を引き抜く。ヘレンはワルサーPPK、ビリーはコルトパイソン。
それらの愛銃を振り向きざまに構えた2人は――誰も居ない空間に銃口を向けていた。周りの警察官達は何も感じなかったのか、ヘレンとビリーの挙動に困惑している。
「ビリー、今っ……!」
「お前も聞こえたか、ヘレン……!」
「さっきの声は一体……!?」
だが、先ほどの女性の声を確かに聞いていたヘレンとビリーは、戦慄の表情で拳銃を構え続けていた。鼻腔に残るコーヒーの匂いと女の芳香が、幻覚の類ではないのだと確信させる。今の「殺気」を背後から放って来た声の主を探すように、2人の銃口はクリスマスの夜に揺らめき続けていた。
「ヴ……ヴゥ、ガァ、アァアァッ!」
「……ッ!?」
すると次の瞬間、死亡していたはずの構成員が白目を剥いて起き上がって来た。この構成員も、ギルエード事件の時にヘレンが遭遇したものと同じ――「突然変異体」だったのだろう。理性を失った怪物は獣のような雄叫びを上げ、無軌道に暴れ始めていた。
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