聖夜編 悪魔の影と騎士の絵本 前編
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「仮面ライダーアスモデイ」こと暁月レイラが数ヶ月前、北欧某国で起こしていた凄惨を極める殺戮事件。その捜査を担当していた彼は当然、悍ましい「現場」の惨状を目の当たりにしていた。
地面を染め上げる夥しい鮮血と、漂って来る強烈な血の匂い。その光景と死臭は、今もビリーの脳裏と嗅覚に深くこびり付いている。同行していた同僚達の多くは、この事件に直面したことで精神に深い傷を負い、今も現場に復帰出来ていない。
それほどまでに酷い事件の記録を、自分に代わってチェックしているヘレンの心労を思うと――否応なしに胸が締め付けられてしまう。
(ヘレン……)
このような世の中だからこそ、少しでも家族と共に過ごせる時間を大切にしなければならない。そうと頭で理解していながらも、ビリーはヘレンの胸中に胸を痛め、眉を顰めていた。
「パパ……ヘレンと真凛、今年はパーティー来れないの……?」
「あ、あぁ……ごめんな、モリー。2人は、その……今はちょっとお仕事が忙しいんだ。寂しい思いをさせてしまって、済まないと思っている。だがどうか、分かってあげて欲しい。これも……世界の正義を守るためなんだよ」
一方。父の背中を寂しげに見上げる幼い少女――モリー・ケンドは、去年のクリスマスにヘレンと真凛から貰ったクマのぬいぐるみを抱き締め、幼気な瞳を潤ませていた。父に心配を掛けたくないという気持ちと、胸に募る「寂しさ」が鬩ぎ合っているのだろう。
彼女は父と肩を並べている新世代ライダー達のファンでもあるらしく、リビングの壁には彼女が描いた仮面ライダータキオンや、仮面ライダーオルバスの絵が飾られている。自分達の仕事に理解を示し、応援してくれている愛娘の瞳に、ビリーは苦々しい表情を浮かべていた。
「私……2人に、会いたかった……元気な姿、見たかったな……」
「あぁ、そうだよな……パパも同じ気持ちさ。いつか平和になったら、その時はまた……昔みたいに、皆で遊ぼう。真凛も、ヘレンも一緒だ」
頻発にケンド家に遊びに来ていたヘレンと真凛は、モリーにとっては歳の離れた姉のような存在だったのだ。そんな2人がこの場に居ない寂しさが、その可憐な貌に顕れている。愛娘の涙を目の当たりにしたビリーは悲しげに眉を寄せると、片膝を着いて我が子を優しく抱き締めていた。
「……うん、分かってる。パパもヘレンも真凛も、今は……悪くて怖い人達から、皆を守るために戦ってるんだよね」
「モリー……」
「だからね、パパ。私、来年もずっと良い子にしてる。そしたら、またサンタさんにお願いするの。今年はちゃんと、皆揃ってパーティーしたい……って」
「あぁ、あぁ……そうだな、来年はそうしよう。大丈夫だ、サンタさんはきっと叶えてくれる。その頃にはきっと、世の中も平和になってる。真
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