聖夜編 悪魔の影と騎士の絵本 前編
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『……何ですって? ケージとオルバス以外の『仮面ライダー』が、このニューヨークで目撃されている……?』
――2020年12月25日。仮面ライダーケージと仮面ライダーオルバスが逃走中の蜘蛛型怪人を撃破し、ノバシェードのニューヨーク支部を壊滅させていた頃。
ノバシェード対策室の本部が設置されている高層オフィスビルで、独り事務作業に没頭していたヘレン・アーヴィングは、同僚の特務捜査官から掛かって来た電話の内容に眉を顰めていた。
『そんなはずはないわ。他の新世代ライダー達は全員、他の現場に散っているはずよ。どうせあなたのことだから、市警に配備された試作量産型と見間違えたのでしょう? 馬鹿なこと言ってないで、今夜くらいは家族と一緒に居てあげなさい。あなたが担当していた事件の記録なら、私が代わりにチェックしておくから』
新世代ライダーの一員ではなく、対策室のデータベースにも無い謎の「仮面ライダー」。そんな得体の知れない影が、ニューヨーク市内で目撃されている。その荒唐無稽な内容にため息を吐くヘレンは、取り付く島もなく一方的に電話を切ってしまう。
「おい、待てよヘレン! 本当なんだって! 俺も目撃者達の写真を確認したが、フェイクの痕跡なんて無かったんだ! あれは間違いなく――って、ちょっ!? ああクソッ、アイツ切りやがった!」
その電話の相手だった同僚の男性――元ニューヨーク市警のビリー・ケンド捜査官はスマホを握り締めたまま、困り果てた様子で声を荒げていた。口髭を蓄えた、筋骨逞しい強面の色男だ。彼は同僚の身を案じるように、自宅の窓から外の夜景を見上げている。
マンハッタン区の住宅街に位置する一軒家で、家族と共にクリスマスの夜を過ごしていたビリー。彼は目撃者達から寄せられた情報をヘレンに報せようとしていたのだが、どうやらまともに相手にして貰えなかったようだ。パーティーを楽しんでいた彼の妻子も、心配そうにその様子を見守っている。
「あなた、ヘレンは何て……?」
「馬鹿なこと言うなってさ。全く、最近のアイツには参ったよ。独りで思い詰めてどんどん突っ走ってしまう。先輩の悪い癖が移っちまってるみたいだ」
ヘレンの友人でもある妻の言葉に、ビリーは深々とため息を吐く。問題行動の累積が原因で対策室から除名され、行方を眩ましてしまった元同期――真凛・S・スチュワート。彼女のことを気に掛けていたビリーは、その後輩であるヘレンの今後も案じている。
(シャドーフォートレス島の時だって、かなり危うい捜査だったはずだろうに……無茶なところばかり真凛に似やがって。その上、俺が担当していたあの事件の記録まで見ようだなんて……心配するなっていう方が無理な話だぜ)
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