第8話:強者の矜持
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月鍔ギンコperspective
着地した某は周囲を警戒する。
出入り口らしき場所の両側には巨大な人の石像があり、古めかしいデザインやかぶった埃の量から古代の物であると見てとれる。その他で目に付くのは大量の瓦礫くらいだ。
「ん?このネバネバした物は?」
よく視ると、それは1本の線の様に続いていた。マリアンヌ殿を攫った曲者の足跡の様な物か?
だが、信用して良いものなのか?
「ツキツバ!」
背後からセツナ殿達の声が響く。
「ツキツバ様!お嬢様は!?」
ウララ殿の剣幕が凄かったが、某は冷静に気になる事を軽く説明した。
「この粘液が足跡に見える?」
「では、犯人はナメクジ系の魔物でしょうか?」
ウララ殿はこのネバネバした物をナメクジが移動した後だと決めつけるが、それにしてはあからさま過ぎないか?下手に付いて行けば、顔面に人参をぶら下げられた馬の様な事になりかねん。
「……いや、このネバネバに頼るはよそう。それより、他に何か手がかりは無いか?」
その途端、ウララ殿は困り果ててしまわれた。
「おそらくここは地下遺跡かと。実はこの街は巨大な遺跡の上に建てられているのです」
「下は迷路って事かよ!?ま、私はすでにマリアンヌの匂いは覚えたから良いが……」
「出来るのか!?匂いだけで!?」
「任せな!氷狼族の誇りに賭けて!」
凄い物だな……まるで忍びの者に育てられた忍犬の様だ。
それから、しばらくセツナ殿の鼻を頼りに進んでいくが、ここはどうやら迷宮の様に道が複雑に入り組んでいる。それに、それほど強くはないがマモノも潜んでいる様だ。
「ふう、こんな平和で豊かな人里ですら、ともすれば簡単に人が死にかねぬ合戦場になりえてしまうとは……」
「!?」
「ツキツバさん!変にウララさんを不安がらせないで下さい!」
「不安なのはこっちの方だ!『氷狼族の鼻を嘗めるな!』と言った手前だが、既に大分走ったぞ!?」
「何度か調査したことはありますが、分かっているだけでも四階層はあります。なにぶん全貌が分からないだけに、どこに何があるのかは不明です」
「おい!」
セツナ殿は進めど進めど一向にマリアンヌ殿に逢えぬ事で焦っている様ですが……
「……どうやら、あのネバネバを罠だと決めつけたのは、某の早合点の様ですぞ?」
「それじゃ何か!?犯人はやはりナメクジ系の魔物だと言うのか!?」
その直後、右横から某達を襲ったマモノをウララ殿が吹き矢の要領で仕留めた。
「やけに手際が良いがなんのジョブなんだ!?」
「アサシンです」
あさしん?
やはりまだまだこの世界独特の言葉になれておりませぬ。
故に、セツナ殿が何を驚いているのかが解りません。
ただ、ウララ殿なら先程の野盗共に勝てるのでは?とは思える。
セツナperspecti
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