第四十六話 結想その十七
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「他ならぬわらわがです」
「止めるか」
「何があろうもと」
「仕方ないのう、ではそのそなたをじゃ」
もう一人の丁は自分自身の言葉を受けてその自分自身を見据えて言った。
「止めねばな」
「逆にですか」
「そうじゃ」
「わらわを止めて」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「世界も人間も何もかもをな」
「滅ぼすのですね」
「そうしようぞ」
「させません」
丁は静かな口調のままだった、だがそこに確かな決意を込めて答えた。
「それは」
「わらわにもか」
「止めさせません、必ずです」
「わらわを止めてか」
「人間を護ります」
「では勝負になるな」
もう一人の丁は自分自身を見据えて邪悪な微笑みで以て言った。
「これからは」
「天の龍地の龍の戦いだけでなく」
「それはあの者達が勝手に思い込んでおることでな」
それでというのだ。
「この世の全てを賭けたじゃ」
「わらわ達の闘いがはじまる」
「そうなるのう」
「これからは」
「そうじゃな、だが」
丁は邪な笑みのままこうも言った。
「安心せよ。そなたはわらわ」
「わらわ達は同じなので」
「そなただけは殺さぬ」
こう告げるのだった。
「何があってもな」
「生きるのですね」
「共にな、例え勝負をしようとも」
それでもというのだ。
「闘いになろうとも」
「わらわは殺さない」
「そなたも同じであろう」
丁自身もというのだ。
「そなた自身であるわらわを殺さぬな」
「・・・・・・・・・」
沈黙だった、それが丁の今の返事だった。
「それは」
「そうであろう、安心せよわらわはそなただけは好きじゃ」
「自分自身であるが故に」
「殺さぬ、むしろ愛でてな」
そうしてというのだ。
「共にじゃ」
「生きていく」
「全てがなくなった世界でのう」
「そうですか、しかし」
「それでもか」
「わらわの考えは変わりません」
「あくまでか」
「人間を護ります」
「世界もじゃな」
「そして他の生きものも文明も」
「ならそうせよ、しかし勝負はな」
これはというのだ。
「行うぞ」
「そうですか」
「必ず」
こう言ってそうしてだった。
丁は彼女の眠りの深いそれに入ってだった、もう一人の自分と別れた。そうして目覚めるとまた彼女の仕事をしていくのだった。
第四十六話 完
2023・10・1
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