第三部 1979年
曙計画の結末
部隊配属 その3
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非ずです。
ソ連の攻撃部隊の規模、時間、兵力などがBETAに漏れてしまったために、BETA側は8割以上……
いや、9割近い部隊を後ろに下げて、勢力を温存したという可能性も十分考えられます」
眼を閉じて聞いていると、議長は、自分のために世事軍政にも長じている大学教授が、講義でも聴かせているようにすら思われた。
「確かに、近代戦の権威らしい鋭敏で明快な発想だ。
ソ連砲兵の大火力から、突撃するしか能のないBETAは避けるすべを持たないであろう。
シュトラハヴィッツ君、君の言う意見が正しいかもしれん」
議長は、シュトラハヴィッツの意見を聞いて満足した風だった。
「よろしい、では議事録は、後日製作するものとて……。
本日は、散会とする」
政治局員と閣僚たちは、それぞれの部署に戻るべく、会議室を出ていった。
後に残ったのは、議長とアーベル・ブレーメだけだった。
「アーベル、ゼネラルダイノミクスに、連絡を入れてくれ。
サンダーボルトA-10を10機、試験購入したいと……。
開発中の第二世代の試験機に、我が国もかませてくれるようにな」
だがアーベルは、その一策を聞くと、それこそ不安なのだといわぬばかり眉をひそめ、
「ちょっと待ってくれ」
と、アーベルは突っ込むように言い出した。
「第一、最新機ならば、米国議会の輸出承認がなければ、手に入れられないぞ。
むずかしい……、それはむずかしい望みだ!」
そして、議長の考えを、諫めたいような顔をした。
「他言は憚る」
すると、議長は言葉を切り、シガレットケースを懐中から取り出す。
ケースから抜き出した手巻きタバコに、火をつける。
銘柄は、ダン・タバコのブルー・ノートであった。
熟成されたバージニアとキャヴェンディッシュの深い香りが、部屋中に立ち込める。
「何、機密か」
「これを見てくれ」
背広の中から一札の手紙を取り出して、議長は黙ってアーベルの手に渡した。
先日、米国の使節団が齎した議長への親書なのである。
内容は、ゼネラルダイノミクスの働きかけにより、サンダーボルトA10の対外輸出が許可された話であった。
まず20機ほどがエジプト向けに、その他15機が西ドイツと日本に輸出されるという内容である。
アーベルは、親書を返しながら、驚きの眼を相手の顔にすえる。
彼は、しばらくいう言葉を知らなかった。
「アメリカから直接我が国には支援できないから、エジプトに輸出するんだよ」
この時代のエジプトは、英米との関係改善を進めていた。
容共一辺倒であったナセルと違い、現在(1979年)のサダト大統領は現実主義者であった。
アラビア海に勢力を伸ばすソ連を怖れ、米国やイス
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