第三部 1979年
曙計画の結末
部隊配属 その3
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い)である。
猛勇一方のみでなく、人がらもなかなかいい。
議長は、そう思って、シュトラハヴィッツをながめていた
「ソ連が苦戦したのは、敵の防空網を十分に制圧せずに巡航ミサイルでの殲滅を行おうとしたからです。
事前偵察が不十分で、攻撃後の戦果判定も不足しておりました。
防空網を一時的にも制圧せずに、殲滅攻撃に移った。
ですから、光線級の補足にも失敗したうえ、攻撃しても破壊したかどうか、判定できなかったためです。
その為、潰したと思った光線級が実は生きており、ソ連赤軍の地上戦力を支援しようとして、作戦空域に入ってきた攻撃機や爆撃機がレーザーで撃墜されてしまったのです」
議長は、何度もうなずいた。
そしてなお、黙り返っている一同の上を見わたして、今度は、意見を問うのではなく、厳命するようにいった。
「すると、光線級吶喊はまんざら無駄ではなかったと」
「おっしゃる通りです」
「では、つづけたまえ」
「航空機は高く飛べば、レーダーに捕捉されやすくなり、地対空ミサイルに捕捉されやすくなります。
この点は、BETAの光線級も全く同じです。
攻撃を避けるためには、低空を飛ばざるを得ません。
BETAなら小型の光線級が厄介ですが、対人戦の場合は携帯式の地対空ミサイルが脅威になります。
……それに」
彼が、ことばの息をついだ機に、議長はやや斜めに胸をそらし、何か感じ入った態をした。
それは、自分を偉く見せようとか、得意気に調子づくとかいう、誰にもあり勝ちな飾り気の全く見えない。
余りにも正直すぎるくらいなシュトラハヴィッツの淡々たる舌の音に、妙味というか、呆れたというか。
とにかく、議長の心でもちょっと推し量り切れないものが、その顔を包んでしまったように見えた。
『この男、油断ができない』
と、議長がひそかに胸でつぶやいている間に、シュトラハヴィッツは虚飾のない言葉で、
「あと考えられるのが、ソ連赤軍の情報が事前に漏れていたという可能性です」
というシュトラハヴィッツのことばに、驚愕の色を示す。
「それはいったいどういう事だね」
たいがいなことは呑み込む議長も、正気かと、疑うような顔をした。
シュトラハヴィッツは、その顔色を敏察して、
「ソ連には人工ESP発現体という人造人間がいることは、すでに周知の事実と思います。
私の情報網によれば、ソ連は中央アジアでの戦闘に際して、ESP兵士を戦術機に同乗させ、直接思考探査なる行動をとっていたと聞いております」
人工ESP発現体と聞くと、みなピンと心臓が引き締まるようだった。
握りしめる手に力が入って、脂汗が滲んで来る。
「失敗した兵士がBETAにつかまって情報を抜き出されたと……」
「可能性は無きにしも
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