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冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
部隊配属 その3
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た。
防空軍司令は、BETA戦争前から軍にいた経験上、新型兵器というものを認めてはいたものの、過信はしていなかった。
いずれ、航空機が発展すれば、巡航ミサイルに積む半導体が改善されれば、戦術機は無用の長物になると考える人物だった。
 他方、議長は、通産官僚アーベル・ブレーメからの意見に関心を寄せていた。
アーベルとして、戦術機という最新技術の塊に傾倒しており、これが東ドイツ復興のカギになると信じてやまない面があった。
これは、女婿ユルゲン・ベルンハルトが熱心に口説き落としたことも大きい。 
 ユルゲンは、BETA戦争初期でのソ連の敗走を目の当たりにして、戦術機生産のほとんどを東ドイツに移転しようと計画するほどであった。
 現実として、ソ連の戦術機開発は一時混乱したが、停滞していなかった。
BETAの欧露への進撃を受け、工場のほとんどは、極東ロシアに移転していた。
 チタ、コムソモリスク・ナ・アムーレ、ハバロフスク。
シベリア各地にある軍用工場では、MIGやスフォーニの機種は生産され始めていた。

 ユルゲンの想定した通り、シベリアはソ連の中で取り残された地域だった。
17世紀以降、ロシアに編入されたシベリアは、人口も少なく産業も立ち遅れた地域だった。
 帝政時代を通じて、シベリアは巨大な監獄だった。
流民や政府に都合の悪い人物、重犯罪者などが追いやられ、厳しい環境に置かれた。
 確かに天然資源の宝庫で、未開の原野が広がっていた。
だが、蒙古や支那に近く、度々彼らはロシアと干戈(かんか)を交えた。
また、交通網も未発達で、採掘した資源を輸送し、採算をとるころも厳しかった。
 ソ連政権は、革命初期のシベリア出兵の恐怖を忘れていなかった。
精強で勇猛果敢な帝国陸軍を非常に恐れた。
 日露戦争の恐怖を忘れぬスターリンは、シベリアを一大軍事拠点に改造した。
秘密警察は、革命によって生じた囚人を使う大規模な開発計画を立てる。
 その際、シベリア鉄道の各駅沿いに、収容所を作った。

 ペレストロイカが始まる1980年代後半以前、極東ロシアの産業が軍事最優先だった。
極東および沿海州では、軍需生産は機械工業製品の生産高の約3分の2を占めていた。
 ユルゲンは空軍将校としては優れていたが、ソ連の政治や社会構造には疎かった。
それは父・ヨーゼフが政治的失脚をして以降、政界や官界から隠れる生活をしてきたせいでもある。
 ベルンハルト兄妹を養育したボルツ老人もまた、政治の荒波から彼らを守るべく、政治から遠ざけた。
ソ連や東欧諸国の情勢は、一般常識のみにしてしまった。
保護したつもりであるが、それがかえってあだとなってしまったのだ。


 一応、意見として、聞いている顔はしていたが、議長は、防空軍司令などのいう理論に
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