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冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
部隊配属 その3
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ろか、かつての領土であるアラスカを取り戻すかもしれない。
米国経済界の対応次第によっては、ソ連指導部は生きながらえるであろう。
 
 そんな経緯から、東欧諸国はBETA戦争前の軍事ドクトリンに戻り始めていた。
防空レーダーや地対空ミサイル(SAM)を中心とする防空システムの再建である。
 指令システムが高度に発達した今日の近代戦において、対空砲火は脅威であった。
 ソ連防空軍が開発した対弾道弾防空システムС(エス)−300。
この装置は、米軍のパーシングミサイル迎撃用に、1975年に開発が完了した。
 最大射撃高度40キロメートル。
低空からの攻撃を防ぐために、ЗСУ-23-4や9К33 Оса(オーサ)などの近距離防空システムも併用した。
BETAの光線級の脅威がなくなっても、戦場では自由に飛行機は飛べなかったのだ。

 戦闘機開発が遅れたこの世界にあって、地対空ミサイルの脅威は我々の世界以上だった。
特に航空機産業が失われて久しい東ドイツにおいて、その問題は喫緊の課題だった。
 東独空軍は、本心から言えば、戦術機の否定論者であった。
莫大な研究開発費を掛けながら、数年で陳腐化する技術。
 航空戦力は近代戦には必須だが、戦車や艦艇に比して継戦能力はおとる。
その上、衛士の教育は航空要員の育成より難しく、補充もきかない。
衛士たちが粗野な振る舞いをしても大目に見られたのは、そう言った理由からであった。



 さて、東独首脳部の反応を見てみよう。
1月下旬、社会主義統一党(SED)と国家の重要政策を決める党中央委員会が招集された。
議長の司会で、BETA戦争後の国防安全保障、外交政策に関する議題討議を始めた。
 そのことは、今後の軍事政策を決める国防評議会にも影響した。
国防評議会では、早速、BETA戦争に関する反省会が行われていた。
 会議の冒頭、空軍参謀が、持論を述べた。 
「一般論を申し上げます。
航空戦力、とりわけ戦闘機の近代化は、必要でしょう。
近代戦において、空間や地形の制約を受けない航空戦力なしに成り立つ軍事作戦はありません。
戦車や戦艦の比ではない、速度と行動範囲、そして特質すべき機動性と突破力。
その点を鑑みても、早急な近代空軍の再建は無難と思います」
 地対空ミサイルや対空砲を看過する防空軍司令も、似たような意見であった。
「他方、同志議長が懸念されておる通り、予算面に関して言えば。
戦術機は、恐ろしいほどの金食い虫です。
戦術機の特性上、地上基地の補佐がなければ成り立ちません。
ですから、基地建設とレーダーサイトの配備は急務でしょう。
また、高射砲やミサイル防空システムも同様に設置せねばなりますまい」

 防空軍と議長の戦術機に関する考えは、全く違っ
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