【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第5章】エクリプス事件の年のあれこれ。
【第4節】同81年の10月以降の出来事。(後編)
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が……古代ベルカには、『巨女の産む子にハズレ無し』という言い回しがありました」
「ハズレって、何や?」
「この文脈では、『魔力が無い子供、もしくは、魔力に乏しい子供』の意味ですね」
「つまり、グラックハウト症候群の女性が産んだ子供は、全員が『確実に』強い魔力を持って生まれて来る、という意味か?」
「はい。一体どういう機構でそうなるのかは、まだ全く解っていませんが……古代ベルカでは、そのために『子供を産むための機械』のように扱われて、閉経するまで延々と、十八人も子供を産まされ続けた巨女もいたそうです。症例が少なすぎて証明もできませんが、これを否定できる実例もまだ見つかってはいません」
「それもまた……ちょっと本人には聞かせられへん話やなあ」
「ええ。現代では、専門家たちでも知らない話なので、やはり、ミウラちゃんにも、今の話は聞かせない方が良いでしょう」
数日後、はやてとシャマルは、ミウラを新居に呼んでひととおりの説明をしてから、二人だけでリナルディ夫妻との直談判に臨みました。
はやては初めてミウラの家族に会いましたが、こうして見ると、確かに、家族の中でミウラだけが髪の色なども全く違っています。明らかに、ゲンヤと同じような「突然変異」の類でした。
訊けば、やはり、ミウラの母は夫から不貞を疑われ、DNA鑑定までさせられたのだそうです。おそらく、この両親は、それ以来ずっと、ミウラを普通に愛することができずにいたのでしょう。
やがて、ミウラの母親がそっぽを向いたまま、小声でポツリと『私だって、あの子さえ生まれて来なければ』と口走ったのを聞いて、シャマルが珍しくキレました。
椅子を蹴倒すような勢いで立ち上がり、一気にこうまくし立てます。
「あなたたちは、彼女が当初、自分のことをどう評価していたか、御存知ですか? わずか9歳の少女が、自分のことを『不器用で、口下手で、ドジで、ダメな子だ』と言っていたんですよ。普通に愛されて育ったのなら、9歳児は自分のことをそこまで悪く考えたりはしません。誰かからそう罵られたから、そう思うようになったんです。
さあ! そんな小さな小児に向かって、一体誰がそんな暴言を吐いたんでしょうね? 一方的に被害者ぶるのは止めなさい! あなたたちもそれなりに辛かったのかも知れませんが、彼女自身の辛さに比べれば、その程度の辛さなど大したものでは無いんです!」
適当なところで、はやては片手を上げて、シャマルを止めました。手振りひとつで、静かに座らせます。
完全に気圧された中年夫婦は、それでも、ポツポツと自己弁護を始めました。
二人の言葉の大半は、ただの言い訳でしたが、はやてはじきに気がつき
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