【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第5章】エクリプス事件の年のあれこれ。
【第1節】新暦81年、7月までの出来事。
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彼女よ。一昨年のIMCSでも、全然、本気なんて出してなかったみたいだし……。あの時、都市本戦の1回戦で、彼女が本気を出していれば、2回戦では私と当たっていたはずなのだけれど。》
《いわゆる「舐めプ」というヤツですか?》
《いいえ。「舐めプ」と言うよりも……多分、何かしら彼女なりの「縛りプレイ」だったのだろうと思うわ。》
ヴィクトーリアの観察眼には、「人並み外れたもの」がありました。
一方、先程の視線の主は、ジョルドヴァング・メルドラージャという人物でした。元は貴族の家柄で、彼自身も立派な管理局員(18歳)です。
大きな体格に似合わず、やや内気な性格の持ち主ですが、今日は「下の姉」に付き合わされて、この会場の二階観客席に来ていました。
その姉が席を外すと、彼はすかさず心の中でボヤき始めます。
(たまの休日だってぇのに、なんだって朝から叩き起こされなきゃいけないのさ。小姉ちゃんも車の免許ぐらい、早く取ればいいのに。……そう言えば、ボク、IMCSの「女子の部」の方なんて、初めて見に来たなあ。)
彼は、バッグから双眼鏡のような「大型のオペラグラス」を取り出し、リングをはさんだ向こう側の二階席を覗き始めました。やがて、ふとコロナとヴィクトーリアとコニィの姿を見つけます。
(うっわ〜。なんか、メッチャ「ボク好み」のカワイイ子がいるんだけど……。)
しかし、次の瞬間、ヴィクトーリアがいきなりこちらを睨みつけて来ました。ジョルドヴァングは慌ててオペラグラスを隠し、視線を逸らします。
(怖え〜! この距離で視線とか解るのかよ? ……もしかして、有名な選手なのかな?)
ジョルドヴァングは、俯いた姿勢のまま、情報端末から「今年の出場選手のリスト」を出して検索しました。
(ヴィクトーリア・ダールグリュン? もしかして、ダールグリュン本家のお嬢様か! ウチなんかよりずっと格上じゃん。……ヤバイよ。ボク、さっきので目を付けられたりしてないだろうな。すぐに視線を逸らしたから大丈夫だとは思うけど……。)
彼は、さらにリストを読み進めて、目ざとくコロナのデータをも見つけます。
(えっ? あのカワイイ子も選手だったの? でも……まだ12歳?! ヤバイよ。ボク、犯罪者じゃん!)
そこへ、彼の「下の姉」が戻って来ました。
「あんた、ナニ、俯いて泣いてんのよ?」
「ごめん、小姉ちゃん。今、ちょっと悲しみにくれてるところだから、あんまり話しかけないでくれる?」
ジョルドヴァングは俯いたまま、小さく肩を震わせ続けます。
(我が弟ながら、変なヤツ……。)
実際には、とても優秀な陸士なのですが、私生活の方はこんな感じなので、ジ
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