【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第5章】エクリプス事件の年のあれこれ。
【第1節】新暦81年、7月までの出来事。
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ミッド地上で調べものをしているそうです」
「調べもの?」
「プライバシーなので、あまり他所では言わないようにしてほしいんですが、彼女自身のルーツの問題だそうです。年明け早々には別の世界へ行っていたそうですが、4月の末には、『ミッドで亡き祖母の知己が見つかったので、話を聞きに行く』ようなことを言っていました。また、つい先日のことですが、『この件も、そろそろカタが付きそうだ』という連絡がありました」
どうやら、コロナは日常的に、あちらこちらと連絡を取り合っているようです。
そこで、ヴィクトーリアは全く唐突に席を立ち、遠く「リングをはさんだ向こう側」の二階席を睨みつけました。
「……どうかしたんですか?」
「ごめんなさい。今ちょっと『嫌な視線』を感じたような気がしたのだけど……気のせいだったみたいね」
ヴィクトーリアはそう言いながらも、コロナには気づかれないよう、念話でコニィに「あらかじめ決めておいた合図」を送りました。コニィはすぐに、台本どおりの言葉を口にします。
「お嬢様、そろそろお時間の方が……」
ヴィクトーリアはそこで、わざとらしくはならない程度に、小さく溜め息をついて見せました。
「ごめんなさい、コロナさん。話の途中だけれど、私、他にも挨拶回りをしなければいけないから、今日のところは、これで失礼させてもらうわ」
「ああ。何だか、お忙しいところを引き留めてしまったみたいで、申し訳ありません」
「いいえ。いろいろな話を聞かせてもらえて、楽しかったわ。それでは、また」
そう言って、ヴィクトーリアはコニィとともに、やや足早に歩み去って行きました。
ほぼ無人の通路を歩きながら、ヴィクトーリアとコニィは、念話での会話を続けていました。
《随分と可愛らしい方でしたね。しかも、素直で、他人を疑うことを知らない。ウチのお嬢様にあんな御友人がいらっしゃるとは、ちょっと驚きでした。》
《あなたは一体、私のことを何だと思っているのかしら?(苦笑)》
《いえ。別に悪い意味で言ったつもりはありませんよ。(笑)それより、先程の『視線』の主はどうしますか? 必要であれば、特定して締め上げますが。(両目キラリーン)》
《そこまでする必要は無いわ。大方、双眼鏡で人間観察でもしている人がいたんでしょう。》
《それだけで、あの反応とは。……もしかして、お嬢様。少し気が立ってらっしゃいますか?》
《ええ。私も今年で最後だからね。ちょっと本気で狙っていくわよ。》
ヴィクトーリアはそう言って、不敵な微笑を浮かべました。
《ところで、先程のお話に出て来たルーテシアというのは、どういう人なんですか?》
《リングの外で本気でやり合ったら、多分、一番コワいのは
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