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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第5章】エクリプス事件の年のあれこれ。
 【第1節】新暦81年、7月までの出来事。
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、カリムの〈プロフェーティン・シュリフテン〉には、『ヴィヴィオの身に危険が迫っている』という意味にも受け取ることができるような詩文が現れました。
 確証はありませんでしたが、念のためです。カリムは万が一に備えて、ヴィヴィオ本人には何も知らせぬまま、何人かの優秀な修道騎士に『ヴィヴィオたちには(さと)られぬように、交代で(ひそ)かに彼女の身辺を警護する』ことを命じたのでした。

 なお、今年は、ホスト役のルーテシアが先月から再びカルナージを離れていたこともあって、ナカジマジムのメンバーによるカルナージでの合宿は見送られました。
 結果としては、82年以降もずっと見送られ続けることになりましたが、それは、主に経費の問題によるものです。
 実は、79年の合同訓練でも、チャーター便などの費用は、すべて「なのはとフェイトの個人的な持ち出し」でした。
 昨80年5月の合同訓練も、騎士カリムらが特別に負担しており、ナカジマジムとしても、いつまでもそうした「周囲の厚意」に甘え続ける訳にはいかなかったのです。


 そして、6月。
 ミッドでは、多くの中等科学校で三年生の修学旅行が実施されましたが、St.ヒルデ魔法学院の首都圏キャンパスでは、エクリプス事件の影響で、直前になって予定が変更され、行き先は「デヴォルザム第三大陸」の第一州都ネイザルとなりました。
 ネイザルは「カロエスマール」で最大の都市ですが、一般的には「不徳の都」とも呼ばれています。決して「悪徳の」と言うほどに問題の多い都市でもないのですが、それでも、ひどく猥雑(わいざつ)で、普通に考えれば、決して「修学」旅行に適した都市ではありません。
 ただ、実のところ、学校の行事そのものを中止する訳にもいかず、また、これほど多数の「飛び込み予約」を受け付けてくれる場所も、他には見当たらなかったのです。
 教師たちの中には「生徒の安全」を懸念して(実際には、「自分たちの負担増加」を懸念して)もう少し無難な場所の方が良いのではないかと提言する者もいましたが、学長は『毒に触れておくのも、学びの一つです』と主張して、それを退けました。
 学長は、三年生たち全員に対しても、『まずは、(たと)え話をしましょう』と前置きをして、おおよそ以下のような話を述べました。
 これは、単なる建前(たてまえ)ではなく、かなりの程度まで本気の話です。

『今すでに風邪で熱を出している人に乾布(かんぷ)摩擦をさせても、その風邪は治りません。むしろ悪化します。予防法と治療法は本来、全くの別物だからです。
 病気にかかりたくて病気にかかる人はいません。それでも病気にかかってしまった時、その病気を治すには、その病気の治療法に関して正しい知識を持った医者が必要となります。一般人は予防法さえ知っていれば、それで充分です
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