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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第七十五話 国防委員長
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。むしろ市民は軍部以上にそう感じるだろう。違うかな?君はそう考えた筈だ」
「……」
「イゼルローン要塞の攻略で作戦を終えたとしよう。市民は必ずや帝国領への出兵を望むだろう。彼等は、自分達が払った犠牲は要塞一つでは事足りないと思っている。戦争に対する民衆の価値観というのは大昔から変わらない。彼等は払った犠牲に釣り合う利益を求めるものだ。それは専制政治打破という主張だけでは得られない。君はそれを知っていたがゆえにイゼルローン要塞だけでなくアムリッツァという餌をちらつかせた。現に景気は上向きになり、市民は腹を満たし始めた。そして今同盟市民はこう思っている、現実問題として同盟は現時点では帝国を倒せない。だから今は富国強兵だ、その為のアムリッツァ確保だったのだと」

 …いつもの芝居っ気たっぷりの表情は鳴りを潜め、奴の表情は真剣そのものだった。トリューニヒトの考え方を理解する折角の機会だ、色々と聞いてみよう。
「閣下の仰り様を聞いていると、同盟市民が戦争を望んでいるかの様に聞こえますが」
「個人としては望んでいないだろう。個人が大衆になった時に戦争を望むのだと思う。そうでなければ百五十年も戦争は続かんよ。専制政治打破は民主共和制の崇高な義務、だからね」
「失礼な言い方になりますが…そう同盟市民を煽動しているのは閣下の様な政治家の方々、ではありませんか?」
「私が、政治家が市民を煽っていると?私を含めて政治家は職責を果たしているだけだよ。私に限って言えば、国防委員長としての職責をね」
「市民を煽る事が職責だと?」
「煽っている様に聞こえるとしたらそれは私の不徳のいたすところだな。為政者としては戦争状態である以上その遂行に寄与せねばならない。始めた以上は勝利か、帝国から一定の譲歩を引き出さねばならない。それすら実現出来ずに厭戦気分が同盟を支配したらどうなる?帝国に敗けたらどうなる?建国の理念の否定だよ。結局我々は政治犯の子孫に過ぎなかったと認める事になる。同盟の政治家としてそれを認める訳にはいかないし、市民とてそれは認めないだろう。国是として帝国の打倒があるのだから、無責任に戦争を止めようとも言えないんだ。それを言うには年月も経ちすぎたし、犠牲も払い過ぎた」
「言い訳の様にも聞こえます」
「そう、そうだな。立派な言い訳だよ」
言われてみるとそうなんだよ。政府閣僚、同盟の政治家としては当たり前の話なのかもしれない。今思うと原作では同盟の閣僚誰一人として講和とか停戦の類いは言わなかった。散々煽っておいて今更講和や和平など言い出せるものではなかったのかもしれない。作中でウォルター・アイランズが守護天使と化してヤンさんの献策を受け入れたのは同盟の敗戦が目前に迫っていたからであって、ジョアン・レベロやホアン・ルイなどの良識派と呼ばれる存在ですら和平や講和に
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