敢闘編
第七十五話 国防委員長
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防委員会の重みは一気に増した」
それはあんたの重みだろう…とは言っても、流石とは思いたくはないけどトリューニヒトは腐っても政治家なんだな。俺は他の委員会なんて全く気にしてなかったからな…。実際に奴は他の委員会を巻き込んで一気に辺境の再開発を始めたから、他の委員会にしてみれば存在意義の再確認という意味でもトリューニヒト様々だろう。例えそれが認めたくない事実であってもだ…冷めたコーヒーを一気飲みして、トリューニヒトは再び語り始めた。
「そして作戦は成功して現在に至る訳だが…果たしてガス抜きの対象は軍部だけだったのか、と思ってね」
「…どういう意味でしょう?」
我ながら芸の無い間抜けな相槌だけど、奴がそれを待っている様に口を閉じるから仕方がない。
「そのままの意味だよ、少将。私がさっき言った様に、君は同盟市民が帝国への出兵を望むのではないか、そう思ったからあの作戦案を思いついた、違うかな?」
そう言うと、トリューニヒトは空になったカップに再びコーヒーを淹れ出した…。
…意外に洞察力が鋭い。原作の様な状況に同盟が陥らない様に思い付いただけとは言っても、根底にはそれがあるからなんだ。原作だとイゼルローン要塞攻略戦が成功した為に同盟はひどい事になった。ヤンさんの成功を妬んだ闇落ちフォークの自己実現の為だけに、評議会議長に直接持ち込まれた作戦案である帝国領進攻…そして政権維持の目的の為だけにそれは実施された。同盟国内に作戦が発表されても、市民の反対の声は聞こえなかった。それほど帝国に対する反感は強いのだ。現実が見えていたのは一部の政治家と軍人だけ。そして大義成就の為に現実は無視された挙げ句内容は行き当たりばったり…トリューニヒトはあの時賛成しなかった。奴の目から見てもとても成功するとは思えなかったのだろう。作戦は失敗し、賛成しなかった事でトリューニヒトは株を上げた。自己保身の為だったのかも知れない、だがトリューニヒトはトリューニヒトなりに現実を見ていたのだ。政治家として単純に勝ち馬に乗りたいだけなのかも知れない。ある意味奴はフォークの名台詞の通り『高度な柔軟性を保持しつつ、臨機応変に対処』している…。
「閣下がそう仰る根拠はお有りですか?」
「ハハハ…根拠か。今言った通りだよ。何故アムリッツァを確保したのか。作戦としての理由は君が出した修正案の通りだ。だが、果たしてこれは軍部のみを考えての事なのか。この点を突き詰めていくと、ガス抜きという話は軍部だけでなく同盟市民に及ぶのだ。考えてもみたまえ、軍に人材を提供しているのは同盟市民なのだよ…百五十年も戦争が続き、イゼルローン要塞完成後は防戦一方…そしてイゼルローン要塞の攻略が成った…軍部ですら余勢を駆って、という意見が出るとするならば、同盟市民とて同盟は攻勢に転じたと考えてもおかしくはない
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