敢闘編
第七十五話 国防委員長
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地位では権限が不足するのではありませんか?」
「そうだね。今の地位では不足かな」
「という事は最高評議会議長の椅子が必要になるという事ですが、委員長閣下は軍を政争の道具になさるおつもりですか?」
「いけないかね?」
「…いい事だとお思いなのですか?」
俺の言葉を聞きながら、トリューニヒトは笑みを消す事なくコツコツとデスクを叩いていた。まさか、いけないのか、と厚い面の皮で言われるとは思わなかった…奴は叩く指を止めると再び話し始めた。
「先年の事だが、イゼルローン要塞攻略にあたって君は当時のシトレ長官代理の作戦案を修正した。あれは何故かな?」
「…シトレ長官代理の作戦案ではイゼルローン要塞は陥とす事は難しい、そう判断したからです」
「そうだったね。それについては軍事上の技術的な要件だから疑問はない。だが修正案を出すにあたって君は目的を要塞攻略から帝国領進攻へと変更した。それは何故かな」
「…小官の考えた作戦案は全艦隊を動員するものでした。全艦隊を動員したのは一次攻略部隊が失敗した時に備えてです。ですが一次攻略部隊が無事成功した場合、余勢を駆って帝国領へ、という意見が二次攻略部隊…陽動作戦に参加した艦隊から出るのは避けられないという懸念がありました。であればと当初から作戦目的を帝国領進攻としたのです」
「軍内部のガス抜きの為もある…作戦の裏の目的だったね」
「そうです」
再びトリューニヒトはデスクをコツコツと叩き出した。
「だが、それだけではない筈だ。君は軍内部だけではなく、いずれ同盟市民が帝国への出兵を望むのではないかと危惧したのではないかね?」
奴の顔からはいつの間にか不愉快な笑みが消えていた。
「あの作戦はシトレ長官代理が持ち込んだものだ。当時の作戦本部長も無論了承していた。その後作戦案は君によって修正された。要塞攻略が小規模の被害で済んだ場合、軍内部に存在する不平不満を解消する為にもアムリッツァを確保する。成程と思った。今まで攻められる一方だった訳だし、全艦隊を動員したのに直接要塞攻略戦に参加した者とそうでない者とでは不公平感があるのは否めない…というのは理解出来たからね。そして陽動部隊にアムリッツァ占領の功を譲り軍内部の不平不満を沈静化させる。そしてアムリッツァを確保する事で帝国軍の誘引撃滅を図る。軍人達は武勲の立て放題だな。その上でアムリッツァと帝国に近い辺境星系を再開発し同盟内の経済の活性化に繋げる。アムリッツァを確保し続ける事が出来なければ全てがご破算だ、軍人達や役人達もサボる事なく任務に邁進するだろう。まあ前哨宙域の解放と再開発の促進は私がやった事だが…国内の再開発という意味で他の委員会にも政治的な貸し…点数を稼がせる事が出来る。リスクはあるが誰も損する事のない、いい案だと思ったよ。君のおかげで、評議会内での国
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