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八条学園騒動記
第七百二十七話 象の過去その八

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「動物園の中で平和にだ」
「暮らしていますか」
「そうしてな」
 そのうえでというのだ。
「すくすくと成長してな」
「やがてはですね」
「立派な大人の象になる」
「そうなりますか」
「連合の飼育状況は非常にいいからな」
 このことがあってというのだ。
「間違いなくな」
「大人の象になって」
「人の様にだ」
 そこまでというのだ。
「長生きするだろう」
「そうですか」
「そしてだ」 
 それにとだ、大尉は子象達がどの子も大きな象にじっと寄り添っているのを観ながら上等兵に対して話した。
「常に母象に寄り添っているな」
「子象の習性ですね」
「象の親子の絆は深い」
「それで、ですね」
「離れることはな」
 決してというのだ。
「本来はだ」
「ないですね」
「それをだ」
「かつてはですね」
「サーカス団によってはな」
「無理に引き離して」
 上等兵は顔を暗くさせて言った。
「子象のことを考えないで」
「そしてだ」
「調教して」
「精神的肉体的な虐待を繰り返してな」
 そうしてというのだ。
「無理に芸をさせていた」
「消耗品の様に」
「そして死なせていたのだ」
「ああした子供を」
「そうした歴史もあったのだ」
 かつてはというのだ。
「人間の負の歴史の一つだ」
「まさにそうですね」
「その歴史を歩んでな」
 そしてというのだ。
「結果としてな」
「今がありますね」
「人間は過ちも犯す」
「成功と共に」
「人間の歴史は栄光と共にだ」
「過ちもですね」
「同じだけ刻んできてだ」
 そうしてというのだ。
「そのうえでだ」
「構成されていますか」
「そうだからな」 
 それが為にというのだ。
「そうした碌でもない過ちもだ」
「あるのですね」
「それも残念ながらだ」
 大尉は顔を曇らせて話した。
「数多い」
「虐待の話もですね」
「人間だけでなくな」
「生きものに対してもそうで」
「それでだ」
「象のこともですね」
「その中にあってな」 
 そしてというのだ。
「今こうして教訓にもだ」
「なっていますか」
「そうなのだ」
「嫌な教訓ですね」
 上等兵は思わず言った。
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