覆す力
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攻めてはいるものの決め手に欠けている。残りの酸素の量を考えれば相手の方が有利、そろそろ何とかしなければならない。そう思っていたところ、シリルの口から漏れ出る気泡が一瞬完全に無くなる。
「なっ・・・」
それが何を意味しているか、二通りの考えがある。一つ目はシンプルに呼吸を止めた可能性。しかし、このタイミングでそれをする意味がない。となると考えられるのは一つだけ。
「水竜の・・・」
滅竜魔導士が得意とする魔法の一つ、ブレス。しかし、私もそれは持っているから想定はできた。彼が魔水晶を外すよりも早く身体を反らせるように回避行動に入る。
「咆哮!!」
ブレスを発射するためには空気を消費する。そのために一度酸素を吸い込むことに集中したことで気泡が止んだんだと理解したことでなんとか避けることはできた。だが、それは身体だけだった、彼の魔法は確かに捉えた、私の咥えている魔水晶を。
「くっ!!」
慌ててそれを拾いに動こうとするが、その際不意に視界に入ってきたのは攻撃を放ったことで隙だらけになっている彼の姿。
「なんだ、勝った気でいるのか?」
「!!」
私の弾かれた魔水晶はかなり離れた位置にある。あれを10秒以内に拾えるかを問われるとイエスとは即答できない。だが、あるじゃないか。目の前に目的と同じものが。
「ふっ!!」
「あっ」
私はすぐさま標的を切り替え、彼の手に握られていた魔水晶を蹴り飛ばし、すぐさまそれに向かって前進する。その結果、私はわずかな時間で新たな魔水晶を入手することができた。
「残念だったな、シリル」
あいつのまさかの攻撃で負けかけたが結果は無事に生還。いや、むしろあいつの魔水晶の方が残っている酸素の量は多いはず。むしろ有利になったのかもしれない。そう思いながらそれを咥えた私はーーー
「がっ」
想定外の事態に困惑と苦痛の表情になっていた。
「ない!?この魔水晶には酸素がない!?」
吸い込もうとしたはずの空気が吸い込めなかったのだ。意味がわからずにいた私だったが、彼の方を見てすぐに理解した。
「さっきの言葉、そのまんまお返しします」
彼の口に咥えられているのは先程蹴り飛ばしたと思った魔水晶。いや、正確には違うか。
「バカな・・・」
私が蹴り飛ばしたのは彼が先程付け替えていた方の魔水晶。今彼が持っている方が新しいものだったらしい。
「一体いつの間に・・・」
ブレスを放つ時に手に持っているのは見ていた。それと古いものを入れ替えるところを私は見ていない。
「いや・・・」
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