暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第181話:優しい壁
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思い起こすのはまだ自分がベッドの上で臥せっていた時の事。錬金術により肉体を修復されている彼女の前で、カリオストロが口にした言葉を思い出していた。

『大祭壇の設置に足りない生体エネルギーを、あの男はサンジェルマンが気に掛けてる坊やから練成しようとしている。……それ自体は別に良いわ、あーしはあの子に何の未練も無い』

『ただ問題なのは、それをやらかした時果たしてサンジェルマンがどう動くかよ』

『最近のサンジェルマンは殊更に大きく揺らいでいる。もしかすると、局長に反旗を翻すかもしれない』

『もしそうなったら、あいつはきっと何かやらかす。ま、女の勘だけどネ……』

 カリオストロはそれをさせじと、代わりとなる良質な生体エネルギーを持つだろう他の魔法使いを仕留めようとして見事に失敗したと聞く。その後の生死に関しては不明だが、ティキが何も言っていない所を見るに生きてはいるのだろう。彼女がサンジェルマンを裏切るとは思っていないが、捕虜となった事は素直に間抜けと言わざるを得ない。

 言わざるを得ないが……それでも、面と向かって罵倒するのは憚られた。きっと立場が逆になっていれば自分も同じ事をしただろうと言う確信があるからだ。

「女の勘ね。フッ、生物学的に完全な肉体を得る為、後から女と成ったくせに一丁前な事を吠えるワケダ」

 口ではそう言いつつ、内心ではカリオストロの事を認め、そしてそれを隠す様にグラスの中の牛乳を一息に飲み干した。

「だけど……、確かめる価値はあるワケダ」

 そう口にしたプレラーティの目には、ある種の覚悟が宿っていた。窓ガラスに映る自分の目を見て覚悟を決めたプレラーティは、ホテルの最上階にある展望露天風呂へと向かう。そこでは相も変わらず、アダムがティキと共に泡風呂に入り寛いでいた。
 扉1枚を隔てた先からは、喧しく騒ぐティキの声が聞こえてきていた。

「神の力が手に入ったら、アダムと同じ人間になりたいって言ってるのッ!」

 自分勝手で我儘放題、しかしそれは飽く迄プログラムされただけの中身の無い反応でしかないと知っているプレラーティは、ティキの言葉をただの戯言としか思わなかった。
 しかし次にティキの口から出てきた言葉は流石に見過ごす事は出来なかった。

「だーかーらー、もうこの際魔法使いじゃなくて三級錬金術師をさっさと生命エネルギーに替えちゃってさ――」

「その話、詳しく聞きたいワケダ」

 予告なしに扉を開け浴室へと入るプレラーティ。アダムは今の話を聞かれた事に対して、特に動揺する事も無く立ち上がり泡を付けた裸体を見せ付けながら答えた。

「繰り返してきたじゃないか、君達だって。言わせないよ、知らないなんて」

 そう告げるアダムの傍らでティキがプレラーティの事を見て
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