暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第181話:優しい壁
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と歩調が上手く合わせられていない事に悩んだ颯人は、何か彼女が心を開く切っ掛けになるものがないかと暇を見ては慎次らの手を借りて彼女の過去を調べ上げた。できれば彼女の両親の存在が居れば大きいのだがと思ったが、その過程で彼は調の今の名前がF.I.S.により便宜的に付けられた名前だったと言う事を知ってしまった。これに関しては他の元二課組みの装者には明かしていない。流石にデリケート過ぎる問題だからだ。
 或いは奏や翼辺りは、マリア達の境遇から薄々察しているかもしれないが、その事に関しては触れず得てしまった情報はそのまま胸の内にしまい込んでそれこそ墓場まで持っていくつもりであった。

 が、今回に限ってはここで明かすべきと颯人はこの事実を口にした。

「詳しい事情は省きますが、調ちゃんって事故に遭った後アメリカに引き取られましてね。そこで持ってたお守りから便宜的に名付けられたらしいんです。”つき”と読む”調”と書いて、”月読 調”……ってね?」

 そう、F.I.S.の研究所に連れていかれた時、調はこの調神社のお守りを持っていたのだ。そしてその神社の名前から、彼女は今の名前を付けられそれが定着したのである。であるとすれば、彼女には両親からもらった本当の名前があると言う事になる。
 彼女が未だに本当の名前を名乗らないのは、事故の影響で忘れてしまったのか、それとも過去を断ち切り切歌達と歩む事を選んだからなのか……それは分からない。が、明らかになっている事実は、調は何らかの形でこの神社と関りを持っていると言う事である。

 颯人からその事実を聞かされ、ここで初めて宮司が同様に視線を彷徨わせた。小さく息を呑み、小さく目を見開く。それだけで颯人にとっては十分であった。

「何か……心当たりがあるんじゃないですか?」

 念押しする様に颯人が問い掛けると、宮司は観念したように大きく息を吐いて口を開いた。

「確証は……何一つありません。もしかしたら老人の妄想の類かもしれませんよ?」
「それでも、聞く価値はあると判断しました」
「そうですか……分かりました。確かに、私はあの調と言う子に、娘夫婦の孫の面影を見ました。言え、記憶にある孫が成長していれば、ああなっているのだろうと言う気すらしている」
「それでも何も言わないのは……ポッと出て親族を名乗るには確証が薄いから?」
「左様。あまりにも離れていた期間が長すぎました。何より、今のあの子は何だかんだで幸せそうに見えます。友や仲間に囲まれ、両親を失った事への悲しみを感じさせない。そんな彼女に、残酷な現実を思い出させるのは、果たして正しい事なのだろうかと思うのです」

 それは、確かに一理あるかもしれない。調は颯人が知る限りにおいて、一度も両親恋しさに寂しそうにする仕草を見せた事が無かった。いや、
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