暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
 【第6節】その後のジークリンデとルーテシア。
[1/10]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 さて、話はまた10月に(さかのぼ)りますが……。
 あの「空中乱打事件」の直後、ジークリンデは後先(あとさき)を考えずに試合会場から飛び出してしまいましたが、今後の行動に関しては、実のところ、全くのノープランでした。
 勢いで「中央次元港」の近くまで、何キロも駆けて来てしまってから、ジークリンデはようやく立ち止まりました。息を整え、改めてマントを着込み、フードも深くかぶり直してから、裏通りを抜けて表通りへと(あゆ)み出します。
 幸い、まだ大々的に捜索が始まったりはしていない様子でした。

(今さら実家に戻っても、ただ家族に迷惑をかけるだけやろうし……。さて、どうしたものやろうなあ。シガルディスへ行こうにも、よぉ考えたら、(ウチ)、お金なんて持ってへんし……。)
 一応は、マントの(うち)ポケットの中も探ってみましたが、やはり、ただ「嘱託魔導師の身分証」が(ほう)り込まれたままになっているだけでした。
(こんな時に、また「師匠」がひょっこり現れてくれたりすると、ホンマに助かるんやけどなあ。……さすがに、そこまで都合よくは行かんか……。)
 ジークリンデは歩道のベンチに腰を下ろし、そんなことを考えながらも、思わず周囲に「誰かを探すような視線」を巡らせました。
 もちろん、それで彼女の「師匠」が都合よく見つかったりはしなかったのですが……その代わりに、意外な二人組とバッチリ目が合ってしまいます。
 それは、何と、ルーテシアとファビアでした。

「ルーやんとクロにゃん? 君ら、何故(なんで)こんなトコにおるの?」
「それは、こちらのセリフよ。チャンピオン」
「よく似た別の誰かを見間違えているのかと思いましたよ」
 二人は口々にそう言いながら、ジークリンデの左右に腰を下ろします。
「と言うか、今日って、都市本戦の二日目よね。どうして出場選手のあなたがこんな場所(ところ)にいるのよ。……まさか、あなたほどの人が2回戦で早々と負けて来たなんてことは無いんでしょ?」
「いや。ごめんな、ルーやん。実は、ちょぉ反則をやらかしてもうたんよ」
「反則と言うと……具体的には、何をやらかしたんですか?」
 ファビアに訊かれて、ジークリンデはありのままを答えました。すると、二人は思わず、揃って頭を(かか)えてしまいます。
「クロゼルグの記憶の中のヴィルフリッドは、もう少し冷静で温厚な人物だったはずですが……」
「ちょっ! クロにゃん。その比較は勘弁してや!」

「それと……まさかとは思うけど、相手の選手、死んだりしてないわよね? 傷害過失致死の上で現場から逃亡とか……結構、重罪になるわよ?」
 ルーテシアから軽く(おど)されると、ジークリンデは一瞬、思わず目が泳いでしまいました。
「い、いや。3回殴って1回蹴った
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ