【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
【第5節】同80年の10月以降の出来事。
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ません!」
一瞬、激しく睨み合ってから、ジークリンデは不意に、まるで憑き物が落ちたかのように、ストンと穏やかな(?)表情に戻りました。
「……そうやな。そのとおりや。……済まんかった」
機械的な口調でそれだけ言うと、勝手にリングから降りようと、すたすたと歩き始めてしまいます。
「反則負けということで、よろしいですね?」
「ルールとしては、当然そういうことになるんやろうねえ」
ジークリンデはまるで他人事のような口調で、そう言い放ちました。
実際には、彼女は決して『穏やかな』表情に戻った訳ではありませんでした。
ただ単に『あまりにも感情が昂りすぎて、オーバーヒートを起こした機械のように、感情の機能が一時的に停止してしまった』というだけのことだったのです。
「チャンピオン、少しは加減しろ!」
「俺たちは、殺し合いを見に来た訳じゃねえぞ!」
観客たちの心無い罵声ですら、今のジークリンデの心にはもう届きませんでした。
ジークリンデはリングを降りると、そのまま悠然と会場から立ち去り、自分の控え室へと帰ってしまいます。
その部屋の中で彼女をただ独り待ち受けていたのは、ヴィクトーリアでした。
「ジーク……」
ジークリンデは、名前を呼ばれて思わず目を伏せてしまいましたが、ヴィクトーリアはそのまま静かに歩み寄り、そんな親友の体をそっと抱き締めます。その腕の中で、声と体を小さく震わせながら、ジークリンデはやっとのことでこう説明をしました。
「ごめんな、ヴィクター。どうやら、私、自分で思うとったよりも、お母はんのこと、好きだったらしいわ」
ただそれだけで、母親を侮辱されてキレたのだろうと、おおよその見当がつきます。
しかし、たとえどれほどの事情があろうとも、ここまであからさまに悪質な「傷害事件」を起こしてしまった以上、DSAAとしては、ジークリンデ選手に厳重な処分を下さざるを得ません。
「多分……私は、除名処分なんやろうなあ……。ごめんな。私が普通に勝っとれば、今年もまた、ヴィクターとええ試合ができとったかも知れへんのに」
ジークリンデがどんどん冷静になってゆくのとは対照的に、ヴィクトーリアの心はどうしようもない哀しみに満たされて行きました。
「いいのよ。今は……そんなコトは、どうでもいいの!」
「悪いんやけど、ヴィクター。ミカさんや番長、ハルにゃんやミウやんにも、代わりに謝っといてや。もう対戦できんくなってもうて済まんかった、と」
「それで……あなたは、これから、どうするつもりなの?」
すると、ジークリンデは静かに半歩退きながら、両手でそっと自分の体をヴィクトーリアの体から優しく引き?(
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