【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
【第4節】新暦80年、9月までの出来事。
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いる12名の中でも、5名がクローンです。チンクさんだけは、私の直接の先祖であるディヴィサと同じ『改造クローン』だそうですが、あとの4名は、特に遺伝子をいじっていない『素のクローン』ですよね?
素のクローンは、オリジナルとどれぐらい似るものなのですか? また、似ない場合、その理由は何なのでしょう?」
これは、確かに「いささか無遠慮な質問」でした。それでも、フェイトは(エリオやギンガやスバルに代わって)明瞭に、すらすらとこう答えます。
「遺伝情報が全く同じである以上、身体的には、一卵性双生児と同じぐらいには似ていて当たり前よね。でも、身体以外の要素となると、どうやら一卵性双生児ほどには似ないことが多いみたいなの。実際、私やエリオのオリジナルは、魔力をほぼ持っていなかったらしいわ。
そうした違いが出る理由は……まず、ひとつには、発生過程の問題ね。着床前の胞胚の段階でも遺伝子の微細な突然変異はあり得るから、実は、本物の一卵性双生児のゲノムですら、必ずしも『細部まで完全に同一』だとは限らないの。まして、医療的な措置がいろいろと施してあるクローン胚なら、なおさらのことよ。
他にも、胎児の段階での周辺環境の違いも大きいと思う。同じ子宮で同時に育った本物の一卵性双生児ほどには似ない理由の多くは、おそらく、これでしょうね。
また、もうひとつには、マイクロキメリズムの問題があるわ。胎盤を持つ動物に特有の現象なのだけれど、実は、母体の細胞が胎盤を素通りして、そのまま胎児の体の中に入り込むというのも、ごく普通に起きている現象なのよ。
実際に、最新の技術では、そうした『母体由来のマイクロキメラ細胞』の有無を調べれば、その人物が『生身の人間の胎から産まれて来たか、否か』を判別することだって可能なの」
「それは……普通の生まれ方をした人間なら、誰にでも起きている現象なのですか?」
「ええ。あなたやルーテシアの体内にも、実の母親の細胞は相当な数が紛れ込んでいるはずよ。
そうした細胞は、表現形質にはほとんど影響しないんだけど、もっぱら免疫力の強化に役立っているの。免疫に関与する遺伝子は数が多く、それぞれに遺伝子の型も多数あることが多いんだけど、どの遺伝子においても、より多くの型が揃っていた方が、免疫の上では有利になるからね」
「つまり、普通なら、父親由来のモノと母親由来のモノの二種類しか無いはずのモノが、マイクロキメラ細胞があれば、三種類目のモノがあり得る、と?」
「ええ。そういうことよ。もちろん、母親が最初からその遺伝子をヘテロで持っていれば、という条件つきの話になるけどね」
「そうした母体由来の細胞は……おおよそどれぐらいの数があるんですか?」
「個人差もあるでしょうけど、私は『数億個程度』と聞いて
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