【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
【第3節】同79年の10月以降の出来事。
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の年齢にならないと、脳神経系が追い付かない、ということなのでしょうね。あなたも、クラウスの晩年の記憶は?」
「あなたの言うとおり、晩年の記憶はまだまだ曖昧です。だからこそ、15歳の時の『悲劇の記憶』ばかりが強調されてしまって……。
言い訳になりますが、私は4歳で、唐突にクラウスの記憶を継承してしまったので、それ以前の『自分自身の記憶』がほぼ消えてしまっています。それだけに、クラウスの記憶からは逃れようもありませんでした」
「それは大変でしたね。私も今年の2月、親代わりの祖母が急死し、悲しみの中で記憶を継承したため、11歳当時のクロゼルグの負の感情にすっかり意識を飲み込まれてしまい……大変に御迷惑をおかけしました」
「ところで、クロゼルグは、その後、どうなったのですか? クラウスも、『他の難民たちとともに南方へ流れて行った』という噂は聞き及んでいたのですが」
「実は……クロゼルグは流れ流れて、次の年には、ガレア王国の東部辺境に落ち着き、その一帯を治める辺境伯ラグゼリスの庇護を受けて、魔法研究を続けました。
しかし、その土地では、クロゼルグは『女性の名前としては』相当に不自然なモノだったため、彼女は辺境伯の勧めに従い、最初のKと最後のGを取って、代わりに女性名詞語尾のIAを付け、ロゼリアと名乗りました。ロゼリア・クロゼルグの後半生は、それなりに幸せなモノでした」
「何故、彼女が幸せだったと解るのですか? それは、先程の年齢の話と矛盾しているのでは?」
「記憶としては、私もまだ、始祖クロゼルグが15歳だった頃までしか明瞭には思い出せません。しかし、祖母の遺品を整理していて、『ディヴィサの手記』を発見しました。そこに、クロゼルグの晩年の様子や『継承される記憶』の概要が、おおよそのところ、書き記されていたのです」
「その……ディヴィサというのは?」
「ああ。ロゼリア・クロゼルグの一人娘です」
「ということは……もしかして、辺境伯との子供ですか?」
「いいえ。始祖クロゼルグは獣人でしたから、普通の人間との間に子供は作れません。……この話は、どうか内密にしていただきたいのですが……ディヴィサは、ロゼリアがみずからの胎で産んだ『彼女自身の改造クローン』です。
御存知のとおり、獣人の染色体は24対ありますが、実を言うと、これは、人間本来の23対に、人工的に合成されたもう1対の染色体を付け加えたものなのです。
だから、獣人の全能細胞から、その余分な1対の染色体を取り除いた上で、クローンを造れば、そのクローンは最初から『普通の人間』として生まれて来ます。技術的には……染色体を丸ごと合成して付け加えることは、大変に難しいのですが……後から、それを取り除くことは、実はそれほど難しくはないのだそうです」
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