暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
 【第3節】同79年の10月以降の出来事。
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
です。そうやって、左右の肺をもろともに破られれば、『突然の肺気胸(はいききょう)』と同じように即死すらあり得ます。一見、単純な技のようにも見えますが、実際には、あれは『クラッシュ・エミュレート・システム』無しでは決して使ってはいけないレベルの、とても危険な技なのです」
「それでは、今、ヴィヴィオ選手は?」
「あの苦しげな表情から察するに、今は左の肺だけで呼吸をしている状態でしょうね」
 アインハルトは冷静にそう答えました。

「何てエグい技を……。養女だと聞いたけど、やっぱり、実の娘じゃないから、あんなコトができるのかな?」
「それは違うよ、番長。『他人様(ひとさま)から預かった大切な子』やなどと思うとったら、あんなコトはできん。本当に『自分の子供』やと思うとるから、できるんや」
 ハリーのつぶやきに、ジークリンデは不意に涙ぐみながら、そう答えました。
(もしも本物のお(かあ)はんが、(ウチ)と同じ能力の持ち主が、今も生きていてくれとったら、(ウチ)も小さい頃から、あんなコトができとったんやろうか?)
 そう思うと、どうしようもなく哀しくて、ジークリンデはとうとう、そのまま涙をこぼしてしまいました。決して今の養父母に不満がある訳ではありませんが、こうして「なのはとヴィヴィオの固い結びつき」を()の当たりにしてしまうと、どうしても「それを(うらや)む気持ち」が(おさ)え切れなかったのです。
 しかし、ハリーやエルスには、ジークリンデの涙の意味が全く理解できませんでした。彼女たちは所詮、「ごく当たり前の家庭に生まれて、ごく当たり前の(人並みの)幸福の中で育った人間」だったからです。

 一方、観客席の片隅では、周囲の「ルーフェンから来たヴィヴィオの友人たち」には聞こえないほどの小声で、ミカヤが独り静かにつぶやいていました。
「できるけれど、『それほど得意ではないから、今まで使わずにいただけ』か……」
 何かしら、彼女は彼女なりに、思うところがあったようです。

 ヴィヴィオは落下の衝撃で、思わずレイジングハートを手放してしまいました。すると、レイジングハートは勝手に空を飛び、また、なのはの手の中に戻って行きます。
 ヴィヴィオはやっとのことで立ち上がりましたが、呼吸の調子が元に戻りません。
どうやら、アインハルトの解説どおり、クラッシュ・エミュレート・システムによって、右の肺の機能が一時的に停止させられているようです。
 そんなヴィヴィオに向かって、なのはは無慈悲にも失策の理由を語って聞かせました。
「あなたは、私のことを、あまりにも詳しく調べすぎた。だからこそ、私がレイジングハートを手放すことなど、絶対にあり得ないと思い込んでしまった。
 でも、よく覚えておいて、ヴィヴィオ。『これまで一度も無かった』から
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ