【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
【第3節】同79年の10月以降の出来事。
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です。そうやって、左右の肺をもろともに破られれば、『突然の肺気胸』と同じように即死すらあり得ます。一見、単純な技のようにも見えますが、実際には、あれは『クラッシュ・エミュレート・システム』無しでは決して使ってはいけないレベルの、とても危険な技なのです」
「それでは、今、ヴィヴィオ選手は?」
「あの苦しげな表情から察するに、今は左の肺だけで呼吸をしている状態でしょうね」
アインハルトは冷静にそう答えました。
「何てエグい技を……。養女だと聞いたけど、やっぱり、実の娘じゃないから、あんなコトができるのかな?」
「それは違うよ、番長。『他人様から預かった大切な子』やなどと思うとったら、あんなコトはできん。本当に『自分の子供』やと思うとるから、できるんや」
ハリーのつぶやきに、ジークリンデは不意に涙ぐみながら、そう答えました。
(もしも本物のお母はんが、私と同じ能力の持ち主が、今も生きていてくれとったら、私も小さい頃から、あんなコトができとったんやろうか?)
そう思うと、どうしようもなく哀しくて、ジークリンデはとうとう、そのまま涙をこぼしてしまいました。決して今の養父母に不満がある訳ではありませんが、こうして「なのはとヴィヴィオの固い結びつき」を目の当たりにしてしまうと、どうしても「それを羨む気持ち」が抑え切れなかったのです。
しかし、ハリーやエルスには、ジークリンデの涙の意味が全く理解できませんでした。彼女たちは所詮、「ごく当たり前の家庭に生まれて、ごく当たり前の(人並みの)幸福の中で育った人間」だったからです。
一方、観客席の片隅では、周囲の「ルーフェンから来たヴィヴィオの友人たち」には聞こえないほどの小声で、ミカヤが独り静かにつぶやいていました。
「できるけれど、『それほど得意ではないから、今まで使わずにいただけ』か……」
何かしら、彼女は彼女なりに、思うところがあったようです。
ヴィヴィオは落下の衝撃で、思わずレイジングハートを手放してしまいました。すると、レイジングハートは勝手に空を飛び、また、なのはの手の中に戻って行きます。
ヴィヴィオはやっとのことで立ち上がりましたが、呼吸の調子が元に戻りません。
どうやら、アインハルトの解説どおり、クラッシュ・エミュレート・システムによって、右の肺の機能が一時的に停止させられているようです。
そんなヴィヴィオに向かって、なのはは無慈悲にも失策の理由を語って聞かせました。
「あなたは、私のことを、あまりにも詳しく調べすぎた。だからこそ、私がレイジングハートを手放すことなど、絶対にあり得ないと思い込んでしまった。
でも、よく覚えておいて、ヴィヴィオ。『これまで一度も無かった』から
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