暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第4章】Vividの補完、および、後日譚。
 【第2節】IMCS第27回大会の都市本戦。
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ました。
「おい。ナニ、あたしより目立ってんだよ、コノヤロー」
「客層がウチとだいぶカブってるだろう。お前も、いずれはプロになるんだから、今のうちに顔と名前を売っておいた方がいいぞ」
「勝手に決めんな、このクソ親父(オヤジ)!」
 この父娘(おやこ)は、決して仲が悪い訳ではありません。ただ、お互いに少しばかり口が悪いだけなのです。(苦笑)

 ルーテシアは、序盤では多彩な魔法攻撃でテラニスを翻弄(ほんろう)しましたが、結局は第3ラウンドで盛大に壁まで吹っ飛ばされ、そのまま起き上がれずにリングアウト負けになりました。
「どうやら、壁に叩きつけられて、脳震盪(のうしんとう)を起こしたようですね」
 そんなジェスカの言葉もまだ終わらないうちに、シャマルたち医療班が素早くルーテシアの許に駆けつけ……じきに、司会席に向かって『大事ない』のサインを送ります。
「今、ドクターが()ていますが……ああ! 大丈夫なようです」
 そのサインを見て、司会者もそんな安堵(あんど)の声を上げ、ルーテシアは担架(たんか)に乗せられて、そのまま静かに運ばれて行きました。

 一方、劇的な勝利にもかかわらず、テラニスの表情は今ひとつ晴れませんでした。
「ん? どうかしたのか?」
「まさかと思うけど……親父。八百長とか仕組んでねえよな?」
「そんな金があったら本業につぎ込むよ。なんだって、お前なんかのために使ってやらなきゃいけねえんだよ。……何か妙なトコロでもあったのか?」
「いや。ただ単に、意外なほど軽かった、ってだけのコトなんだけど……」
テラニスはちょっと不思議そうな表情で、自分の拳を見つめます。
「そりゃ、あの体格だ。お前よりは随分と軽いだろうさ。……さあ。それより、次のシード選手は強敵だぞ。マジで対策、()っとかねえとなあ」
 その後、テラニス選手は医務室まで相手選手の様子を(のぞ)きに行きましたが、ルーテシアからは上手(じょうず)におだてられて、先程の疑念もいつの間にか解消されてしまいました。(苦笑)

 その会場では、観客を中心に選手や運営関係者など、合わせて何千人もの人間が、テラニス選手の勝利する場面を見ていたはずなのですが、その中で、ルーテシアの作為(あるいは、不作為)に気がついたのは、わずかに二人だけでした。
 観客席で、ヴィクトーリアは周囲の人間には聞かれないよう、背後に立つエドガーに「念話で」こう語りかけます。
《エドガー。今の、あなたは解った?》
 エドガーは、リングを降りたテラニスが自分の拳を不思議そうに見つめているのを遠目に見ながら、こう答えました。
《ええ。しかし、テラニス選手の表情を見る限り、事前に二人の間で何か申し合わせがあったとは思えません。ルーテシア選手の方にもそれなりの事情があってのことでし
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