第二章
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「だから助け出したらな」
「それからは山の中でか」
「ああ、あいつと一緒に暮らす」
こう言うのだった。
「そうする」
「そうか、それならな」
「ああ、行って来る」
表情も強いものだった、そうしてだった。
霞朗はすぐに文姑を助けに向かった、領主の屋敷の方に駆けていってだった。
文姑と彼女を連れ去った兵達に追いつき隙を見て彼女を助け出してそのうえで村に戻ろうとした、だが。
その話を聞いた領主は怒り狂って命じた。
「娘を取り返せ、男は殺せ」
「そうしますか」
「それでは」
「俺も行く」
高倉自身もというのだ。
「いいな、必ずだ」
「娘はですか」
「妾にですか」
「するぞ」
こう言ってだった。
彼は兵をさらに出して自ら率いてだった。
そうして二人を追った、二人は泉の傍まで逃げたが。
そこで追い付かれた、高倉は二人を血走った目で観据えて言った。
「もう逃げられないぞ」
「くっ、あと少しだというのに」
霞朗は苦い顔で文姑を抱き締めて護りつつ言った、高倉が連れている兵達は皆剣や槍それに弓矢を持っている。
霞朗も弓矢を持っている、だが彼一人ではどうにもならないのは明らかだった。
「どうする」
「泳ぐ?」
文姑は霞朗の腕の中で言った。
「ここは」
「泉をか」
「ええ、それで向こう岸まで行って」
そちらを見て言うのだった。
「それでね」
「逃げるか」
「そうする?」
「それしかないか、相手は皆武器や鎧兜を身に着けている」
高倉は違うがやけに豪華な服を着ている。
「如何にも重そうだ」
「それで泳いでも」
「俺達には追い付けないな」
「そうよね」
「そうだな、それならだ」
「泳いで逃げましょう」
向こう岸そしてその先にある山までと、とだ。こう話してだった。
二人で泉に飛び込もうとした、だが。
ここでだ、突如としてだった。
「空が曇ってきたぞ」
「何だいきなり」
「雷も鳴ってきた」
「天気が荒れだしたぞ」
高倉が連れている兵達が転機を見て言う傍からだった。
天気が荒れてだった。
見る見るうちに暴風雨となった、その中で泉を覆っているネムノキ達のうちの一本の枝が風で折れてだった。
高倉のところに飛んで来て彼の額に突き刺さった、領主はこれで即死しもんどりうって背中から倒れてしまった。
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