第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「それでぜよ」
「これからそれを食いながらか」
「後藤さんと話がしたいぜよ」
「そうなのか」
「料亭でとも考えたがここにしたぜよ」
「わしと二人で会って話をするにはか」
「最初は料亭だったぜよ」
会って話したのはというのだ。
「それならぜよ」
「今度は旅館でか」
「いつも同じ場所だと飽きるぜよ」
龍馬は笑ってこうも言った。
「だからぜよ」
「それは確かにな。では」
「軍鶏鍋を食いながらのう」
「これからの話をしようか」
後藤は鍋の前に座った、そうしてだった。
龍馬と彼は二人で鍋を囲んでそれを食べつつこれからのことを話した、龍馬はそれが終わってから同志達に言った。
「器が大きい、一角の御仁ぜよ」
「信頼出来るか」
「ああ、覚悟も決めて時代も見ちょるからのう」
中岡に笑顔で答えた。
「倒幕の中にな」
「土佐藩も入ってもらうか」
「ここでわしが二人だけのなったところでぶすりとやると考えてぜよ」
「来なかったり供を連れて来たならか」
「それまでということだったぜよ、土佐を入れても」
倒幕の中にというのだ。
「後藤さんはのう」
「入れなかったか」
「しかし一人で来てわしが作った軍鶏鍋も一緒に食って腹を割って話した」
そうしたからというのだ。
「後藤さんは信頼出来るぜよ、ならこれからもな」
「共にやっていくか」
「そうするぜよ」
こう言ってだった。
龍馬は同志達に彼と話したことを詳しく説明した、そして後藤も。
周りの者に龍馬について話した、そのうえで言うのだった。
「上士嫌いで仇とも言えるわしに砕けて話した、剣呑な気配は一切なかった」
「そうでしたか」
「何もしてこなかったですか」
「刀も抜きませんでしたか」
「刀は腰になかった、懐に短筒がちらりと見えたが全く見ようとしなかった」
そちらもというのだ。
「話はこれからのことで鍋も食った」
「共にですか」
「そうでしたか」
「そうであった、あの者確かだ」
着物の袖の中で腕を組んで話した。
「だからな」
「これからはですか」
「あの者も頼り」
「共にやっていきますか」
「そうする」
こう言ってだった。
後藤は土佐藩の家老として龍馬を信頼し彼と共に倒幕に向かうことを決意した。そして実際に共に動いていったが。
維新になりだ、普段は過去のことを言わない彼がふと周りにこんなことを言った。
「坂本と食った軍鶏鍋は美味かった」
「坂本殿と食べた」
「その鍋はですか」
「美味かったですか」
「そうだった、また食いたいな」
こんなことを言った、もうそこに龍馬はいなかったが。
遠い目で言った、後藤の知られざる逸話の一つである。
軍鶏鍋 完
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ