第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「ほお、わしが子供の頃板垣さんにいじめられちょるか」
「後藤君にもな」
「それで下駄で頬を叩かれたりか」
「随分執拗に嫌がらせされていじめられているが」
「わしは確かにいじめられっ子じゃった」
龍馬自身このことを認めた。
「泣き虫で寝小便たれでのう」
「今でも用足しはいい加減だな」
「そうじゃのう、しかしまっこと板垣さんとはぜよ」
「会ったことがないな」
「生きてる間は一度もぜよ」
「それではいじめられる筈がないな」
「ある筈がないぜよ」
断言するのだった。
「全く以てぜよ」
「ある筈がないことだな」
「そうぜよ」
「しかしその漫画ではそう描かれている、君と後藤君には幼い頃からの因縁がある」
「結構出来た人がおるとは聞いちょったが」
後藤のことも話すのだった。
「はじめて会ったのは長崎だったぜよ」
「あちらでだな」
「それまで一度もぜよ」
「子供の頃は会っていないか」
「そうぜよ、しかしその漫画ではそうなっちょるか」
「君が大活躍をして彼等はまさに屑だ」
大久保はきっぱりと言った。
「若し実際にそうした連中なら僕が吉之助さあと話をしてだ」
「あれか、密かにじゃのう」
「桐野君に行ってもらってな」
「そうしたぜよ」
「腐り果てて同志の志士達を何人も卑怯なやり方で殺した無能な者なぞいらない」
実にきっぱりと言い切った。
「だからな」
「西郷さんはそうした手段も執ったからのう」
「僕も迷わなかった、だが実はな」
「違うぜよ」
「全くだ、漫画は面白くする為に色々描くが」
「小説やアニメもじゃのう」
「ドラマもな、しかしだ」
大久保はそれでもと話した。
「あまり事実と違うとだ」
「困るぜよ」
「全くだな」
大久保は龍馬の言葉に頷いた、そしてだった。
龍馬にその漫画を渡して読ませると龍馬に真顔で言われた。
「わし凄過ぎぜよ」
「そして板垣君達はだな」
「わしがその時聞いていたのとは全くの別人ぜよ、そしてまた言うぜよ」
「彼とは一度も会っていないな」
「そうぜよ、それでいじめられるとかないぜよ」
こう言うのだった、そしてだった。
板垣と会ってその漫画の話をすると高杉と大久保を交えて四人でそんなことはないと言い合った。そのうえでその漫画を読んでまた言った。
「わしこんなのじゃないぜよ」
「いや、僕はこうなのか」
龍馬だけでなく板垣も言った。
「これはかなりな」
「やり過ぎぜよ」
「面白いにしても」
「事実と全く違うぜよ」
こう話すのだった、そしてだった。
読み終わった後は四人で龍馬が作った軍鶏鍋を囲んで飲んだ、そちらはありのままの味で実に美味かった。
会ったこともない人 完
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ