第百二十六話 言葉を受けてもその十
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「本当に」
「そう思うならな」
「尚更ですね」
「ああ、覚悟決めてな」
「余計なことは考えないで」
「断わられたらとかネガティブなことはな」
その余計なことの具体的な中身も話した。
「そのうえでな」
「告白することですね」
「そうしなよ、もう考えるより動く」
「それ位でいいんですね」
「買うもの買ったらな」
ヒヤシンス等をというのだ。
「立ち止まらずに交番に行ってだよ」
「告白ですね」
「いいな」
「そうします」
咲もそれならと頷いて答えた。
「その時は」
「そうしろよ、じゃあな」
「その金曜行って来ます」
「それじゃあな」
マスターは微笑んで応えた、その微笑みが咲にとってのエールであり咲もそれを受け取った。そうしてだった。
咲は金曜どうするかをイメージトレーニングそれも何度も行って交番の周りや駅から店そしてその交番までの道も必死に頭に入れた。
彼女なりに必死に事前の準備をした、それで体調も整えたが。
「何だ、飲まないのか」
「今日はね」
家に帰って白ワインをナッツ類と一緒に楽しんでいる父に答えた。
「いいわ」
「最近飲んでないんじゃないか?」
「ちょっとね」
父にそれはと返した。
「最近飲む気になれなくて」
「それでか」
「牛乳とか飲んでるの」
実際に咲は今牛乳を飲んでいる、そうして言うのだった。
「身体にいいしね」
「牛乳か」
「こうしてね」
「その方が身体にはいいしな」
父もそれならと納得した。
「飲みたくないならな」
「無理して飲むことなくて」
「そういうの飲んでな」
牛乳を飲んでいる娘に話した。
「楽しんでな」
「いいわね」
「ああ、ただ飲みたい時はな」
父は娘にそうした時のことも話した。
「これまで通りだ」
「飲んでもいいのね」
「身体を壊さない限りな」
「じゃあそうしていくわね」
「お酒は楽しんで飲むものだ、それか流れ落とす為か」
「嫌なことを?」
「忘れる為にな、飲んだら流してな」
嫌に想うこと、それをというのだ。
「それでな」
「また前を向くものね」
「咲もわかってるな、そうして飲むものでな」
「身体壊したり飲みたくないのに飲むのは」
「駄目なんだ、無理して飲んでもな」
そうしてもというのだ。
「美味いか」
「そんな筈ないわね」
「そうだろ、咲もわかってるな」
「坂口安吾も言ってたし」
終戦直後に活躍した無頼派に属する作家だ、太宰治や檀一雄とも交流があったことで知られている。
「ウイスキー、あの人ウイスキィとか書いてたかしら」
「あの頃の表現だな」
「それでね」
そのうえでというのだ。
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