第三章
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「誰か、けどほんまな」
「シリーズは流れやな」
「こっちのミスかこれはって手で変わる」
「ここでもしどんでんさんがええ手打ったら」
「それがやな」
「決め手になるかもな」
老人は言った、だが彼も予想していなかった。その名前が出ることに。
「ピッチャー湯浅」
「えっ、湯浅!?」
「湯浅かいな!」
「湯浅が出るか!」
「ここでそれか!」
甲子園が騒然となった、そして。
湯浅がマウンドに出た時だ、ファン達のボルテージはこれまでとは比較にならないまでに上がった。
今の阪神ファン達は普段より熱狂的だ、だがそれがだった。
「やったれ!」
「久しぶりのマウンドや!」
「絶対に抑えるんや!」
「そしてピンチを凌ぐんや!」
「そや湯浅やれ!」
老人も叫んでいた。
「ここで抑えるんや!そうしたら同点でや!」
「逆転や!」
「九回になってもサヨナラや!」
「湯浅それにつないでくれ!」
「ずっと出てこなかったんや!」
「ここで抑えたら伝説になるで!」
球場の雰囲気が一変した、それはまさに。
色が瞬時に変わるかの様だった、青から赤に。寒色から暖色に一変し黒と黄色が世界を支配したかの様だった。
その中でだ、湯浅は。
見事抑えた、すると球場のボルテージはどうにもならないまでに高まった。
「やった!」
「やったで!」
「このまま勝つで!」
「九回でも何や!」
「サヨナラや!」
「八回九回で一点でも入れたれ!」
「もう一点もやるか!」
夜の甲子園が燃え上がった、まさに虎を愛する者達の心が全てを覆った。そうして試合は進み九回本当にだった。
サヨナラとなった、ナインだけでなく観客席も喜びに包まれた。
「やったわ!」
「勝ったで!」
「阪神勝ったわ!」
「湯浅よおやった!」
「近本よお打った!」
「これはひょっとしたらな」
老人も興奮を隠せない声で言った。
「湯浅が出たあれがな」
「流れ決めたかもな」
「実際それで試合変わったしな」
「一気に感じ変わったわ」
「球場全体が」
「そうなったわ」
「ほんま球場の雰囲気がな」
ファン達のこれ以上はないまでの熱狂がというのだ。
「勝利を後押ししたわ、これで明日勝てば」
「ああ、もう阪神や」
「阪神王手や」
「それで優勝や」
「優勝が見えるわ」
「そうなるわ」
こう言ってそうしてだった。
老人は阪神を愛する自分と同じ心を持つ者達と一緒に甲子園を後にした、その時エックスをチェックするとだった。
「ほんま湯浅の登板がな」
「変わり目になったな、試合の」
「ネットでも言うてるな」
「そうした風に」
「そや、これは大きな勝利や」
老人はまだ興奮している、そのうえで言うのだった。
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