敢闘編
第七十四話 第十三艦隊、誕生
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「参謀長、艦隊の状況はどうですか」
「はい、今のところ問題ありません。索敵状況も異状ありません」
「ありがとうございます…ヤンさん、アムリッツァ防衛の時もそうでしたが、貴方を参謀長と呼ぶのは何だか妙な感じがします」
「はは、小官も妙な気持ちです。閣下が高等参事官の頃はそうも思わなかったのですが…閣下、まもなく演習開始になります、気を引き締めて参りましょう」
ウィンチェスターは私の言葉に意外そうな、そして面映ゆそうな笑顔を作りながら深く頷いた。
ウィンチェスターの為に新設されたと言っても過言ではない艦隊。新造艦は少ない。新造艦は出来るそばから先日の戦闘で損害を受けた艦隊に回されている。だからこの艦隊を構成する艦艇は修理が終った艦艇やオーバーホールの終ったベテランの艦艇がほとんどだ。だが元の乗員は所属していた艦隊に戻っていくから、乗組員の大半が新兵や経験の浅い士官達ばかりになっている。しばらくは練習艦隊の様な有り様になるだろう。
『それ位俺だって解っているさ、もう一杯いくか』
『ありがとうございます…私も将来について考えた事はあります。イゼルローン要塞を奪取して、その戦果を材料に帝国と講和する。恒久的平和など人類社会にはなかったのですから、とにかく平和と呼べる状況を作って次の世代に引き渡す…ですがウィンチェスターは私の考えを否定しました。講和では帝国は面子を保てない、宗主権という名分は帝国に与え、こちらは実を取り降伏する…言葉は違えど平和は訪れます。だから否定されても腹立ちはありませんでしたし、むしろこんな考え方もあるのかと思いました』
『主義主張は生きる方便と奴さんは言っていたな、そういえば…ほら、グラスを寄越せ』
『ありがとうございます。ですが、今思うとウィンチェスターの降伏論には不確定要素が大きいのです』
『不確定要素?』
『はい。帝国の体制の自壊を待つ、という点です。五百年続いてきた政治体制がそう簡単に崩れるとは思えない』
『奴さんは帝国の兵力の誘引撃滅も主張していたぞ。それこそ持久策を採って、というやつじゃないのか』
『それは分かります。ですが帝国が、今は臥薪嘗胆と持久策を採ったならどうなります?自壊ではなく国論をまとめ強固な体制となったなら?彼の降伏論は破綻はせずとも実現は遠いものとなってしまいます』
『だが帝国の国是は神聖不可侵、外敵は認めないぞ。臥薪嘗胆、力の劣る者が他日に備えるという現実を帝国が認めるかな』
『認める事が出来たなら』
『……どちらにしろ世の中の動きは加速していく、という事か。どちらに転んでも、シャルロットの婿を見つけるまでは死ねんしな。どうだ、もう一杯いくか』
「どうしたんです?私の顔に何かついていますか?」
「いえ、何故奥様を、キンスキー少尉を副官になさったのかと
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