第3部
ジパング
新たなる国
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読めない字で書いてある。何故だかわかるか?」
村人たちに問いかけるが、返事を待つ間もなくユウリは自答する。
「お前らがヒミコを頼りすぎるあまり、ヒミコ自身がお前らに助けを乞おうとしなかったからだ。異国の言葉でこの日記を残し、俺たちのような旅人にすがるしかなかったんだ」
『……!!』
そう、日記には直接書かれていないが、内容を読む限り、そう言ったニュアンスが含まれていると私たちは感じた。魔王を倒すほどの実力を持つアンジュさんは、責任感も人一倍あったのではないか。彼女と対等に渡り合えるほどの強さや指導力を持ったこの国の人間が結局いなかったのだとしたら、頼れるのは自分だけだと思うのも不自然ではないと思ったのだ。
「ヒミコがいない今、お前たちの国を作るのは、お前たち自身だ。自分達がこの国でこれからどう生きるか、一度自分たちで考えた方がいいんじゃないのか?」
そこまで言うと、ユウリは一番近くにいた屋敷の関係者らしき人に、日記を手渡した。
「俺たちの役目はここまでだ。日記の内容が知りたいなら、あんたらが牢に押し込んだ異国の罪人にでも翻訳させればいい」
「な、なぜそれを……!?」
それはもちろん、屋敷を出る前に確認したからだ。ヒイラギさんが言っていたことをシーラが思い出し、すぐに屋敷を探し回った。すると屋敷の離れに鎖に繋がれた金髪の神父を発見した。
事情を聞くと、彼は半年ほど前に布教のためにここにやってきたそうだ。まずは権力者であるヒミコに話を聞いてもらおうとしたところ、些細な言いがかりをつけられてしまい、すぐに牢へと入れられたという。おそらくオロチの好みではなかったのか喰われることはなく、かといって下手に殺せば騒ぎになると思ったのか、飼い殺し状態で今まで生かされてきたらしい。
私たちがやってきたとき、彼は最低限の食事しか与えられていなかったのか、ほとんど骨と皮だけの姿になっていた。ヒミコがいなくなったことを伝えると彼は、自分が村人にとって必要とされたときに牢から出ると言った。彼なりの考えがあるようだ。
ともあれこれ以上は私たちの出る幕ではない。この国の人たちや、神父の手に委ねるしかないだろう。
「俺たちはここを出る。ヒミコの願いを果たしたからな。あとは自分達でなんとかしろ」
半ば切り捨てるようにそう言うと、ユウリは群衆をかき分け、村の入り口へと歩きだした。私たちもそれに続く。
「あ、あの……。オロチを倒してくださって、ありがとうございました」
ぼそりと、村人の一人が声を発したような気がした。するとそれに反応するように、あちこちから控えめなお礼の言葉が挙がってくる。
けれどあえて気づかない振りをした私たちは、足早に村を去ったのであった。
「はあ〜、疲れたぁ〜!」
船に乗り込むなり、シーラは開口一番ため息
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