暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第3章】SSXの補完、および、後日譚。
 【第5節】キャラ設定3: 冥王イクスヴェリア。
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 大公の言うとおり、『死に絶えた世界の中で、たった一人で永遠に、ただ無為に生き続ける』というのは、もう考えるだけでも恐ろしいことでした。

 時に、古代ベルカ歴1041年、ミッド旧暦282年。(新暦では前258年。)
 結局のところ、イクスヴェリアは、大公の一人息子フォルクハルトとその侍女マティルダとマリアージュの軍団長ヴァロザミアの三人だけを連れて、〈操主の鍵〉とともに、王家所有の小型艇でひっそりとベルカ世界を離れることにしました。
 しかし、まずは充分な量の物理燃料を補給するために、「聖王の都」に隣接した巨大次元港へと向かいます。
 その次元港で、イクスヴェリアは補給作業が終わるまでの間、しばらく一人で周囲をぶらぶらと見て回ったのですが、その港からは毎日毎日一万を超える数の人々が移民船に乗り込み、泣く泣く故郷を(あと)にしているという話でした。
 見たところ、ごく一部の王侯貴族は自分たち専用の次元航行船を所有していましたが、大多数の一般人は公共の移民船で、現地に到着するまで薬で眠らされ、わずかな量の手荷物とともに丸太のようにぎっしりとその船内に積み込まれているようです。
 それは、ほとんど人間あつかいを受けていない、見るも(あわ)れな姿でした。
『故郷を喪失する』というのは、かくも(みじ)めなことなのです。

【なお、イクスヴェリアはそこで、一人きりで身分を隠したまま移民しようとしていたハインツの姿を見かけ、自分の正体に気づかれぬよう、親の迎えを待っている小児(こども)の振りをしながら、少しばかり彼と話をして来たりもしたのですが……それは、また全く別のお話です。】

 イクスヴェリアたち一行は少し遠回りになりますが、まずはドナリムとバラガンドスを経由してオルセアに立ち寄り、その中央大陸の南方に拡がる無人の密林地帯を選んで、軍団長ヴァロザミアを深く眠らせて誰にも見つからぬよう地中に埋め、そこからだいぶ離れたところに〈操主の鍵〉をも埋めて行きました。

 後に、ミゼット・クローベルは『心は水、体は器のようなモノ』と述べましたが、やはり、人間の意識(こころ)のあり方は「ある程度まで」体のあり方によって規定されているのでしょう。
 実のところ、イクスヴェリアの「感性」は、まだ肉体と同様に9歳児のままでした。
 だからこそ、幼い彼女には「今までずっと自分に尽くしてくれたヴァロザミア」を殺すことなどとてもできなかったのです。
 後の時代に、この甘さが〈マリアージュ事件〉につながる結果となってしまうのですが、それを理由にして、この時点での彼女の行動を非難するのは、9歳児に対してあまりにも(こく)というものでしょう。

【もちろん、この時点では、『後に、この世界で惑星全体規模の内戦が起きて、その密林地帯までもが戦場となり
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